2016/12/10

新オレンジプランを読んで

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

厚生労働省が打ち出した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を読んだ(詳しくはこちら→)。厚労省のお役人、有識者のエライ先生方が知恵と打算と誤算を交えて作ったのだから、「総論、ごもっとも。各論、なんかヘンだぞ」というのが率直な感想です。



認知症の発症予防は何より大切です。アルツハイマー型認知症(ATD)の場合、潜伏期間が20年ほどあるとされており、各タイプの認知症のうちで相対的には最も研究が進んでいます。だからなのかも知れませんが、その知名度も手伝ってか、何でもかんでもATDと診断されてしまっていることがあります。

初診ではATDが妥当であったとしても、そのうち前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)と診断名を変えた方が妥当であることもあります。当然、症状が違うのですから処方される薬も変わってきます。ところが現実は診断はATDのままで、ドネペジルが漫然と処方され続けている事例もあります。

施設の場合、情報提供書に記された診断名と、実際に見る症状が大きく異なっていることに気付くことがあります。ある入所者はグループホームで暮らしていたのですが、介護しきれなくなって、当施設に移り変わりました。暫く様子を見ているうちに、「ああ、これはピックだね!」と分かりました。一般に、前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)の場合、グループホームでの生活は難しいです。他の入所者の迷惑になりますし、施設スタッフの介護負担を増大させるからです。

これが、「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護の提供」という目標と現実の乖離です。まったく機能していないのです。こういう事例は少しばかりの知識があれば気付くことができます。



医療連携という名の虚構
施設の場合、連携医療機関として幾つかの病院や診療所が掲げられています。「施設入所者に何かあったら、この病院に連れて行きます」あるいは「往診してもらいます」という仕組みです。医療機関をただ並べておけば、認知症以外の疾患であれば機能するでしょう。ところが、同じような認識でいると、認知症は「医療機関に丸投げ」では期待する治療成果は得られません。


「医療機関に丸投げ」というのよくあることです。出された薬を漫然と飲ませ続ける、寝たきりの全介助の状態になっていても抗認知症薬を飲ませ続ける。症状を見て、「この向精神薬はいらないよね」と気付いていても飲ませ続ける。こういったまったくの無駄なことがくり返されているのです。

その結果、どうなるのか? 介護負担の憎悪です。これは結局のところ、介護費の増大につながります。勿論、医療費の無駄遣いでもあります。
2年毎の診療報酬改定と、3年毎の介護報酬改訂の時期が重なる2018年、大きな変革が求められるだろうと予測されています。
医療・介護現場としてどうすればいいのか? 上図の上段にあるような医療と介護をただ並べただけのシステムでは有効な機能を果たすことはできません。上図の下段にあるように、医療と介護の「接合領域」の機能をしっかりと組織化・システム化させるのです。

このシステム化を一番構築しやすいのが老健だろうとみています。その次が特養です。実際には、制度・法律上の違いはあっても、これらに暮らす入所者の容態は同じようなものです。つまり、制度・法律上の区分けには実質的に意味がないのです。唯一明確なのは、「特養では最期まで暮らすことができる」ということです。

2025年までは高齢者は増加します。ある意味、これらの施設への入所需要は増えますから、ただ待っていれば「顧客」の方からやって来ます。ところが、それ以降は高齢者は減少に転じますから、いくらかは買い手市場となり、「安かろう悪かろう」は通用せず、優秀で評判の良い施設だけが生き残れる時代になるだろうと思います。

優秀で評判の良い施設というのは、何も入所希望の本人や家族に限ったことではありません。そこで働く介護・看護職にも影響します。評判の良い職場で働きたいと思うのは当然のことです。そもそも、モチベーションが違います。

分かり易く表すと、
[入所者の質]×[介護・看護職員の質][施設の質]
ということになります。