2016/09/09

第一印象は重視せよ


この症例は「CBS(大脳皮質基底核変性症候群)と気付くのに遅れました。但し、気付くと言っても推定でしかありませんが。
何故気付くのが遅れたかというと、図中の右のように、右腕を前方/上方に真っ直ぐ伸ばしたままで、左腕は曲げたままだからです。左側のように、腕を下ろした状態であればピンと来るのがもっと早かったかもしれません。第一印象=先入観を専らの認知症鑑別の主軸に置きながら、ちょっとした姿勢の違いに惑わされた実に初歩的なミス(思い込み)です。

現在の症状
この症例では以下の
・無言、無動(寝たきりにならないように、離床している)
・コミュニケーションなし(声かけにゆっくりと視線を動かす程度)
・四肢の鉛管様筋固宿(左上肢が特に顕著)
・嚥下障害(介助にて経口摂取可能)
・眼球運動麻痺(常時一点凝視、時々左右に動かす)

もはやこうなると、CBS末期で手の打ちようがないのですが、この状態になるまで78年経過しているようです。初期は、神経内科でアルツハイマー型認知症(ATD)と診断されていました。のちにデイケアを利用して、その後老健に2年間ほど居ました。この間に複数の医師と、多数の看護・介護スタッフの介在があったのに、相も変わらず、「初診がすべて」のようで、途中経過から診断が変わることがなかったようです。


CBSの初期にはATDと似た症状もあることから、ATDと間違えられることも指摘されていますが、症状が進行してもATDでは図のような姿勢にはならないです。症状の進行によってATDではなく、CBSだと分かったとしても有効な治療方法はないのが現実ですが、やはり適切な診断(鑑別)は必要でしょう。

「これがATDの末期なのだ」という誤った認識を持つことになりますし、医師のみならず看護師、介護士の知識向上にならないからです。認知症の初期では典型症状が出揃うことは少なく、どのタイプの認知症であるのか混沌としているものです。進行するに従って症状が出揃い、鑑別精度が上がってきます。この変化を継続的に観察することが重要です。ATDがずっとATDのまま、DLBがずっとDLBのままであるとは限らないのです。

残された希望
この症例でとても気の毒なのは、頻繁に面会に来る家族です。ATDではなくCBSとは知らず、面会の都度、持参した果物を食べさせ、四肢の固宿が進まないよう他動運動しているのです。
CBSPSPSも国指定の難病で治療方法はないとされ、ガイドラインではリハビリだけが唯一の対症療法とされています。

しかし、最近では、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチ)、グルタチオン、フェルラ酸(フェルガード)という選択肢が登場しているのですから、これらの併用を試みない手はないです。これらに期待するのは、声かけに反応すること、嚥下機能をこれ以上悪化させないこと(胃瘻造設の回避)です。どれだけの効果があるかは試してみなければ分からないのですが、何も手を尽くさないということが納得できないです。