2016/08/19

認知症医療と介護の悪循環理論




「きつい」、「汚い」、「危険」を「3K」と称するのであれば、それはそれで正解です。もうひとつの「3K」。それは、「くすり効かない」、「暗く険悪な雰囲気」、「苦労報われない」と言っても過言ではない介護施設のことです。ここで言う「介護施設」とは、老健、特養、有料老人ホームなど介護保険法で定める施設形態を問わず、認知症患者の居るあらゆる施設のことです。

「くすり効かない」
診断は間違っていますし、処方されている薬も適切ではないことも散見されます。一方、「これ以上の治療を望まない」とする家族の意向を受けてなのか、未治療で放置されたままの認知症高齢者は多いです。認知症には「安定期」はありません。認知症は加齢と共に症状は進行していくのですから、症状の変化に連動して適切な薬の見直しをすることが必要なのです。

また、いよいよ寝たきりとなってしまって、もはや薬の必要なしと思われる場合にはその薬の投与終了も必要です。エンドポイント(薬のやめどき)を意識せず、ダラダラ漫然と投与し続けることに合理性などないのです。

「暗く険悪な雰囲気」
こういう認知症患者でも、中間証にあっておとなしく集団生活を送っている人が居ることも事実です。
一方、適切な治療を受けないまま寝たきりで、無言・無動の入所者も居ます。その入所者の面会にやって来て、無言・無動の親のベッドサイドでじっと見つめているだけの子ども。見ているとやりきれない思いになります。このKは「希望ない」とも言えます。

また、人手不足から時間に追われるだけで、入所者はおろか同僚への思いやりさえなくなって、ただ苛立ちと不満だけが蔓延した雰囲気。これでは入所者への心配りも、親身になったお世話などまともにできるはずがありません。こうなると、人手不足に拍車をかけるように、ひとり、またひとりと介護スタッフが去っていくのです。

「苦労報われない」
介護現場は慢性的な人材不足です。いわば「介護スタッフの自転車操業」を年中やっているようなものです。こんな状況に誰がした!? と、犯人捜しをやっても仕方ありません。これが日本全国、どこにでも在る現状です。給与待遇のことはさておき、せめて高齢者のお世話がやり甲斐ある仕事にしたいものです。

やり甲斐というのは、「この施設に入所してから、調子がすっかり良くなったね」と家族に言っていただけるようになることです。「症状変わらず、寝たきり」、「家族がせっかく面会に来てくれたのに、無言・無動」 こういう状態を放置・野放しにしている施設に明るい明日はありません。


「介護は介護現場でなんとかする」と頑なになる風潮がいまだに残っているようですが、それは無理ですし、「認知症医療はまだまだ捨てたもんじゃない」と言いたい。介護保険法における施設の分類(有料老人ホーム、老健、特養など)に関わらず、医学的アプローチが必要なのです。


認知症医療の悪循環はいつまでも連鎖する

実行可能な医療の限りを尽くし、痴呆はどうしようもないから放っておく。これは数十年前の昭和時代の姿。昔はこれでもよかったのかもしれません。需要と供給の関係が均衡していて、家族介護の元で暮らして天寿をまっとうするという時代のあったことでしょう。これで地域の福祉に貢献できていたのですが、現在はこれをそのまま踏襲していられる時代ではなくなってきました。


こういう時代の流れにもかかわらず、旧態依然とした施設もあるようで、社会のニーズに対応していないです。何故か? 患者=顧客の囲い込みができていれば、それなりに安定した収益をあげられる仕組みだから。地域ぐるみで、医療機関と介護施設が患者のたらいまわしをしていれば報酬を得られる。
これでは循環系から出て行くのは入所者ではなく、疲弊・失望した介護スタッフです。


悪循環を断ち切る方法はあるのか

方法はある、そう信じていなければ到底やってられない。
国の施策としては、できるだけ在宅で高齢者を看ましょうということになっています。(参照→)
お役人の「作文」なので、「絵に描いた餅」である面もありますが、率直なところ、施設で暮らすより自分の住み慣れた家で暮らして欲しいと願わざるを得ません。誰が3K現場に自分の親を任せたいと思いますか?

多職種連携というのは必要不可欠なことですが、その根本を揺るがす問題点のひとつがこの資料の冒頭に記されています。つまり、「ケアマネジャーの50%近くが医師との連携が取りづらいと感じているなど医療・介護の連携が十分とはいえない」(2ページ)
分かりやすい話し、「医者に口出しできない」ということです。ピラミッド構造の頂点に立つ医師には絶対服従というのが暗黙の了解なのです。加えて、認知症リテラシーは低いことも災いしています。

「病院・老健」、「病院・老健・特養」を構成する法人事業体は日本全国どこにでもあります。先ずは、こういう施設群が多職種連携のお手本を示すリーダーたるべきであろうと思われます。
国の示した大枠のもと、介護保険の保険者である市町村は、こういう事業体をうまく指導して活用しないといつまで経っても介護費用を浪費するだけの制度維持に税金を投入することになるのです。


こういう現状を変える方法はあるのか? 現在考えられるひとつの有力な方法は、コウノメソッドを核(コア)にした認知症治療とそれを支える介護職員のレベルの向上だろうと思います。


施設入所時に最低でもやるべきこと

1.それまでの診断と治療を見直すこと
既往歴に「アルツハイマー型認知症(ATD)」と記されていたら、まずは疑ってみること。とても多いのは、前頭側頭型認知症(FTD)であるのにATDとなっていることです。診断された時期が何年も前のことであれば、特に疑ってみることです。

認知症の初期は典型症状が出揃うとは限らず、鑑別に苦慮することはあります。それで、単に「認知症」とされたり、「アルツハイマー型認知症」とされていることもあるようです。但し、これは善意的(好意的)解釈であって、まったくの誤診と指摘せざるを得ないこともあります。


2.「これ以上の治療を望みません」という言葉を真に受けないこと
認知症に関する限り、この言葉を真に受けることは、「どんな迷惑も受け入れます」と施設側が宣言しているようなものです。そしてこれが「介護は介護現場でなんとかする」と頑なになる一因でもあるのですが、なんとかするにも限度があります。

入所者一人ひとりに十分な時間をかけて声かけし、自立を促すように行動を待つことができるだけの人員配置と時間があればいいのですが、できないでしょう。これが上述の「3K」を助長する原因のひとつではなかろうかと思います。できれば他人様のお世話で、「効率」という言葉は使いたくないのですが、効率を考慮しないで済む時代ではないのです。


だから言いたい!

ブックマン社
「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」 ・・・ 事実です!