2016/07/01

タテマエとホンネの認知症医療

どこまで本気(本心)なのだろうか?
 「興奮性BPSDに対しては、抗精神病薬を使わざるを得ない場合もあるが、これまでに日本人の研究データはなく、EBMだけでは片付けられない問題もある。こうした中、実臨床でかかりつけ医が抗精神病薬を処方する際の医療安全面におけるよりどころとなるような、安全性の高いガイドラインを作成したい」

CareNetより一部転記 



ここでは、「抗精神病薬を使わざるを得ない場合もあるが、これまでに日本人の研究データはなく」とされていますが、エビデンスがあると評価されるに値するよな研究データはないのでしょう。ただし、それは学会として論文掲載を認めた上でのことであり、現実には少量の向精神薬を使うことによってBPSDが改善された経験はあるのではないでしょうか。


機関誌『老健』平成271月号では、以下のような掲載があります。
 米国FDA(食品医薬品局)は平成17年、認知症高齢者の行動、心理症状に対する抗精神病薬の投与は死亡リスクに関連することを発表した。その多くは心臓に関するリスクと感染に関するリスクだ。感染のリスクはおそらく誤嚥性肺炎が考えられる。FDAの勧告以来、認知症の薬物療法がしにくくなった。世界中で抗精神病薬に対して慎重に投与すべきだという動きが起こっており、いまでも続いている。<中略>
 その結果、全く逆の結果が出ている。死亡率と脳血管障害発生率は、薬の使用例のほうが、未使用例よりも低くなる傾向にあった。その理由は、FDAの警告以来、認知症の診療・スキルが向上するとともに、調査対象となった医師の差などがあるだろう。つまり、きちんと使用すれば死亡率が高まることはないと言い切れるのではないかと思っている。

一般に、論文では「第一選択肢」として「非薬物療法を試みるべきである」と結んでいることが多いし、また「更なる調査研究を期待したい」とされています。
前者の「非薬物療法を~」は認知症介護の実情を知らない者の言う常套句であり、現実的には厳しい提案です。後者の「更なる調査研究~」は信頼性の高いエビデンスを得にくいのではなかろうか。もし仮に、プラセボ群と比較して優位差のあるデータが得られたとしても、エライ先生方が論文掲載の審査を通すのだろうかということが懸念されます。

古くからある(従って薬価の低い)薬でも効果があると認めると、製薬会社にとってはあまりメリットがないことになります。また、抗認知症薬を減量したらBPSDが軽減されたという結果が得られたとしても論文として認められないようです。

製薬会社にとっては不都合なのでしょうが、それ以上にエライ先生方のこれまでの調査研究を否定する事実は無視し続けなければならないというご都合もあるのでしょう。
ガイドライン初版の改訂版として第二版を編纂したところにも問題があるのでは? むしろ、潔くゼロからのスタートとして作り直しの方が有益なガイドラインに仕上がると思うのは素人考えに過ぎないのでしょうか?