2016/07/22

認知症を学ぶコツ(4)

更に広く、深く
前回に引き続き、今回も「オタク」な話しです。「コウノメソッドでみる認知症診療」(河野和彦著、日本医事新報社刊)で認知症の症状と治療方法の全体像を掴むことができることは前回書きました。

更に一歩理解を深めるためにはどうするかです。これには、いくつかの方法がありますが、私が実践した方法は、「繰り返し読む」です。繰り返し読みながら、介護現場で遭遇する(目撃する)症状と本に記載された症状・症例を照らし合わせて理解を深めて行きます。


「コウノメソッド流 臨床認知症学」が日本医事新報社から出版されました(2015/10/10)552ページのボリュームがありますが、「集大成」と言うにふさわしい内容です。この本では出典が多数記載されてはいますが、他の著者による類書と比べると少ないのかも知れません。だから、「信頼性に欠ける」、「権威がない」と評するならばそれは的はずれです。

大学教授の肩書きを持つ著者が英文の出典を並べ、EBM(evidence based medicine)があるかのようにまとめあげておきながら、「治療法はない」とか「・・・という報告もある」としても実用上はあまり意味のないことです。経験に基づく治療方法が具体的に述べられているからこそ有用で役に立つのです。

認知症を神経伝達物質(NTM)の過不足で分類した本書は、画像検査や病理学に振り回されない診断と治療を具現化した構成が秀逸で、認知症を論じる上で画期的な手法であろうと思います。
本書は文章がやや冗長であり、無くてもいいかなと思える所もありますが、その冗長性が故にとても読みやすくなっています。
「肩肘張らずに読める」ということが、飽きることなく繰り返し読めるのでしょう。(私は現在3回目の精読中で、毎回マーカーで線を引く箇所が増えていきます。それだけ、前回の読みが足りなかったのでしょう。)

この「コウノメソッド流 臨床認知症学」をスタートにしてもいいだろうと思います。実際はそれでも足りませんので、やはり「レビー小体型認知症 即効治療マニュアル (改訂版)「ピック病の症状と治療 ―コウノメソッドで理解する前頭側頭葉変性症」は必要だろうと思います。


症状を正確に伝える・聞き出す
「同じことを何度も言う(尋ねる)」という症状は短期記憶障害から生じていることもあります。海馬萎縮 → 短期記憶障害 → アルツハイマー型認知症(ATD) という理解でもよいでしょう。
では、「1日に同じことを何度も言う(尋ねる)」となると、どう解釈するか? 前頭側頭型認知症(FTD)を疑ってみることも必要です。
「今日、何曜日?」と、一連の連続する会話の中で何度か言うことであればATD。一方、1日のうちで、何度も尋ねる必然性もないにも拘わらず、わざわざ尋ねるのはFTDである可能性が高いです。

一般に記憶障害=海馬萎縮(側頭葉内側の萎縮)ATDで多くみられることですが、むしろFTDの方が顕著であるという認識の方がすっきりします。因みに、トイレに行ったことを忘れて、介護者への迷惑を顧みず、またすぐにトイレに行きたがるのはATDよりFTDの方が多いです。

「同じことを何度も言う(尋ねる)は上記のようにまるで意味合いが異なってくるのです。ですから、問診する医師は、付き添いの介護者からこの違いをしっかりと聞き出すことが必要ですし、介護者もこういうことをきちんと説明することが求められます。

何故このようなことが解るのかというと、ここで紹介した書籍の字面を追うだけでなく、認知症高齢者の様子をいつも観察しているからであり、書いてあることと実際を対比させる作業をいつも実践しているからです。
これは、認知症に限らずいろいろな疾患を持つ患者の診察で多忙な医師には真似ることのできない、医師に勝る介護者のアドバンテージなのです。だから、医師は介護者の話しを謙虚に聞く姿勢が不可欠なのです。


話しを直に聴くことの重要性
これは少し不思議なことなのですが、手許にある本の著者のお話しを直に聴くという機会は、より一層の興味を掻き立てられ理解が更に深まります。
認知症の介護は、現在服用中の薬のことを常に意識しておくことが極めて重要です。施設の介護従事者はこのことがサッパリ解っていないことがほとんどです。十分にコントロールされていない認知症の周辺症状のせいで、如何に無駄な介護をしているか?! 
このことを書籍(活字情報)のみならず、直接聴く機会を利用するのも学習のひとつです。