2016/07/18

認知症を学ぶコツ(3)

介護従事者は認知症を鑑別できる
たぶん、かなりのオタク系のハナシ。
認知症に興味を持ち始めた当時の私は、「認知症を制する者、介護を制する!」と、何の根拠もなく直感しました。ただの妄想かもしれません。しかし、増え続ける認知症高齢者、相変わらず続く介護人材不足、その他諸般の事情を勘案すると、「妄想」ではないような気がします。そこで今回は、「オタク流 認知症の学び方」です。

認知症を学ぶにあたり、認知症ケアに関することからというアプローチもありますが、認知症ケアを基盤(中心)に据えたアプローチでは認知症を十分に深く理解することはできません。この方法は自分で実際にやっていたのですが、モノにはなりませんでした。山登りに例えると、目指す山頂もルートも、自分が求めるものとは違っていたのでしょう。
認知症ケアを基盤とた場合、書物には薬物療法はほとんど記載されませんし、あるとしてもほんの少しです。「他書に譲る」とされることが多いです。


認知症の症状と治療の視点で学ぶ



こういう経験(経過)を踏まえて、「コウノメソッドでみる認知症診療」(河野和彦著、日本医事新報社刊)が入門書、スタートに適していると思います。これから認知症診療に関わりたいという医師のみならず、患者家族や介護従事者にもお奨めです。

先ずは、認知症の全体像を俯瞰することから始まります。それにうってつけなのが、「コウノメソッドでみる認知症診療」です。何故なら、ここに記されていることと、介護現場で実際に見ている認知症の症状を照らし合わせて理解を深めることができるからです。

症状を表す用語を覚えることも重要です。但し、著者である河野先生による造語も多数ありますので、一般に使われている用語と混乱しないことも必要ですが、この造語が認知症を分かり易く理解できるポイントであるとも言えます。

全体像を掴んだら、次に詳細です。認知症は主に、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症(VD)の4つがあるのですが、詳細としてFTDを学ぶことをお薦めします。ATDが一番多い認知症なのだから、ATDからでは? 「後回しで、そのうちに」でいいです。

前頭側頭型認知症(FTD)はピック病とも呼ばれている、認知症全体のおよそ15%を占める認知症です。その症状というのが実に多彩で、鑑別に苦渋することもありますが、この理解が実はATDの理解につながります。介護現場で、「この人、とても迷惑だよね」と誰もが感じている高齢者は居るものです。よく観察していると、その人はFTDであるという場合が多いです。

それから、レビー小体型認知症(DLB)です。これを学ぶには、「レビー小体型認知症 即効治療マニュアル (改訂版)」( 河野和彦著、フジメディカル出版刊)が適しています。DLBの症状である意識障害と歩行障害に対する治療がきっちりと記載されており、役に立つ知識を得ることができます。

DLBは典型症例としては、いつもぼんやりと眠たそうにしている、幻覚(主に幻視)があるのですが、次第に怒りっぽくなって暴言を吐き、暴力をふるようになってくることがあります。レビー・ピックコンプレックス(LPC)です。これは河野医師の提唱する分類名ですが、DLB理解のポイントのひとつとなります。

さて、「後回しで、そのうちに」となっていたATDはどうなるのかですが、ここまで理解する過程でATDのことも理解できているハズです。一般に、認知症を解説する際に、ATDとの比較で論じられることが多いのですが、先に紹介した本でもATDのことは記載されているので十分です。

ところが現実というのは酷いもので、誤診だらけです。明らかにFTDなのにATDと診断されている症例は現実に多数あります。ATDは診断として他の認知症ではない、つまり「除外診断」なのです。この除外する作業(診断)ができていないということは、FTDも、DLBも、PSPSもしっかりと理解できていないということになります。

認知症は徐々に進行して行く病気ですが、初診での診断、あるいは初期の鑑別でATDであるとしていても、それでは説明しきれない状態になってくることがあります。時として診断名を変えてくれた方が患者家族・介護者としてはすっきりすることもあります。介護現場では、それが放置され野放しになっていることも散見されます。これは服用している薬の見直し、あるいは終了がおざなりにされていることでもあります。

但し、認知症はどのタイプと明確にクリアカットされる境界線がある訳ではありません。境界領域にある混合型も多数あり、その傾向は年齢が増すに従い混沌としてきます。だから、どのタイプと一義的に鑑別することのできない場合もあります。それでも、基本中の基本としてのこれらの鑑別能力は必要です。


セミナー開催のお知らせ