2016/06/02

認知症医療の縮図

もし仮に、「この人は進行性核上性麻痺症候群(PSPS)かもしれない」と施設職員が気付いたとしたら、その後どのように進展するのだろうか? 現実は非常に厳しいです。

看護師に言ってみる。PSPSを知らないのですから聞く耳(知識と問題意識)を持ちません。
家族に直接説明する。説明責任を果たすという意味では正しいのですが、その後適切な治療に繋げること自体が大変です。相談・受診先が限られている上、「誰が言ったのか!?」ということで施設運用形式の理由から個人ではどうすることもできなくなります。

「ケアプラン」に集約される介護の要の一端を担うはずのケアマネージャーを巻き込んだ行動に持っていきたいところですが、看護師同様に知識がないためコトが動き出すことはありません。「ここは医療機関ではない!」と反駁されるのが関の山でしょう。


どうすることもできないのが現状です。医療から介護までトータルでお世話してもらえる、などという期待が医療・介護施設群に対して家族にあるのなら、それは買いかぶりの「妄想」です。お世話はたしかにしてもらえますが、ただそれだけのことです。深刻なのは、治療機会さえも奪われていることがあるのです。だから、「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」ということになります。

このブログのある読者から、施設内での発表会があり、抗認知症薬を減らすことで認知症の周辺症状は改善できるという主旨の発表をしたが医師等の反応はなく、期待したリアクションはなかったと、知らせてくれました。「やはり、何処も同じか・・・!」

6月1日、厚労省は抗認知症薬の少量処方容認を、各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)の中央会と社会保険診療報酬支払基金宛てに通達しました。これで認知症医療問題のいくらかは解決できるスタートラインを一歩踏み出したと言えるでしょう。


認知症医療問題というのは、抗認知症薬の少量処方がこれまで認められていなかったということだけには留まりません。このページ冒頭にあるように、組織的構造欠陥として医療と介護は事実上乖離しており、連携にはまだまだ程遠いのです。

「連携」といえば耳障りは良いのですが、「無責任」の連鎖です。施設嘱託医、看護師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、資格はもっていない介護職員/スタッフ、それぞれに職務を遂行してはいるでしょう。それが医療施設・介護施設という組織化された集団となると、必ずしも真に認知症患者/施設入所者にとって適切と言える対応ができているとは言い難いところもあるのです。


抗認知症薬を規定通りに使う医療機関とそれに気付かない介護施設に問題があるのですが、向精神薬を適切に使わず、いたずらに介護負担だけを憎悪させていることにも問題があります。




やっと厚労省が通達を出した(2016/6/1)。しかし、高齢者の認知症介護対策は山積しており、「認知症医療・介護改革」はまだまだスタートラインを一歩踏み出しただけに過ぎないのです。