2016/04/10

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(1)

「この人、腕が鉛みたいに固くて服の着脱が難しいね」、「この人、いつまでも噛み続けて飲み込むのに時間がかかるね」 こういうことは介護現場で日常茶飯のこととして遭遇することです。これらの症状から、認知症で思い浮かぶのがレビー小体型認知症(DLB)です。

ところが、この理解だけでは到底説明できない症候群があります。それが、CBSPSPSです。介護現場感覚としての頻度としては5%くらいかなというイメージですです。一般には、「1万人に数人」と推計されていますが、現実にはもっと頻度の多い疾患です。だから、認知症全般を理解する上で、CBSPSPSは必須であろうと思われます。



第2回認知症治療研究会(2016313日、パシフィコ横浜)で、教育講演のひとつとしてCBS(大脳皮質基底核変性症候群)PSPS(進行性核上性麻痺症候群) ―ピック複合関連疾患の神経症候学的検討―」が、中坂先生(新横浜フォレストクリニック院長、神経内科医)により発表されました。

介護関係者も多数参加され、この発表を聴いていたのですが、「自分の間近に存在する疾患」として理解するには更に説明を加えることも必要と思いました。そこで今回、中坂先生の許可をいただき、介護現場の視点から解説させていただくことにしました。



神経変性性の認知症の典型例として、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)を仮に知っているとしても、それだけでは説明のつかないことがあります。
DLBやFTDについては、概ね下図のように「第一印象での特徴」から鑑別して理解することができます。「第一印象での特徴」を掴むというのは、ある意味、日々の介護業務を通じて体得する「勘」です。そして、その第一印象から仮鑑別した病型を支持する症状を拾い集めることで裏付けデータを得るのです。

実は、介護者・介護職は、看護師以上に、医者以上に患者の体に触れていて、それだけに認知症のタイプや症状の進行に気付きやすい機会を持っているのです。

認知症として頻度が少ないとされる、PSP(進行性核上性麻痺)とCBD(大脳皮質基底核変性症)があるのですが、平均寿命に比べて「若い!」ということも手がかりとなります。私がお世話させている人で一番若いひとは69歳です。

この人は寝たきりで、無動、無言であり、入浴と食事のために離床するだけで、他者に迷惑をかけるようなことはありません。鉛管様筋固宿、左右差、びっくりまなこ、顔のシワが少なく艶やかな感じです。食事介助をすると、口をすぼめる、お茶を噛む、飲み込むのに時間がかかる、咽せるという症状を見せます。また、大きく目を開けていて、左右横方向には眼球が動くのですが、上下には動きません。




CBSPSPS。共に「仮診断」ながらも、そのように診断されている症例に出会ったことはこれまでに2例(デイサービス利用者、有料老人ホーム入居者)しかありません。
医療機関での臨床経験や認識が乏しいということが一番良くないことですが、その結果どうなるのかという実例を示します。

【実例】
PSPSと推定している入居者がいよいよ経口摂取が難しくなっており、栄養課職員と介護責任者がペースト食についてどうしようかと話しをしていました。 
食事の形態以前に治療についてどうするかが先でしょう! かなり進行してしまったPSPSなのですが、未治療で野放し。いくら食べさせようと頑張っても無駄なことであり、「理にかなった」ことは何ひとつないのです。このままでは経管栄養となり、経口摂取は不可能となります。

このままでは胃瘻造設となり施設退去は目に見えていますから、看護師に治療可能な開業医まで紹介して話しをしたのですが、「私、精神科系は解らないから」と言って逃げていきました。
褥創対応と摘便にしか注力しない人達のお粗末な対応が、結局のところ無駄な介護負担を生み出しているのです。


次回に続く・・・