2016/02/13

レビー小体型認知症はうまく治せない?!

レビー小体型認知症(DLB)の症例

介護施設はどこも人手不足です。あまりにも人手不足で人員の「自転車操業」をやっているかのようで、正規職員もパート職員も次から次に辞めていきます。それを補う人材派遣の非正規介護者も契約更新することなく去っていきます。これは単にある特定の介護施設に限らず、日本全国どこにでもあることです。

ご多分に漏れず私の勤務する施設も同様で、私が従来型からユニット型施設に応援に行くことになりました。「他の人にも打診してみたけれど、断られた。2ヶ月間だけ応援に行って欲しい」とのこと。「どうせ、ロクな状況ではなかろう・・・」と思いつつ、要請に応じたのでした。(実際、ロクでもないことが分かりました)

出勤初日、ある居室に入ると、Yさんがベッドに横たわっていました。Yさんは約4年前、有料老人ホームでお世話していた人でした。
4年のYさんの様子:
 ・杖歩行なので、転倒防止のため近接介助が必要
 ・活気がなく、おとなしい(抑うつ状態?)
 ・幻覚、妄想なし
 ・REM睡眠行動障害なし
 ・日中は離床して、夜は熟睡
総じて特別に何と言って、なにもなし。DLBは、活気がなくておとなしいことから、うつ病と誤診されることがあるのですが、Yさんの場合は「うつ病」とも「うつ状態」とも思えるような状態ではありませんでした。

昼食のためYさんを離床介助しようと声をかけたのですが、僅かに頷いて返事するだけで声は出ません。ベッドから車椅子に移乗して上着を着せました。その時、肘を持って腕を曲げ伸ばししてみたのですが、両腕ともに「歯車現象」がありました。歯車現象というのは、例えると、「AT車のシフトレバーを操作した時に感じるカクッ、カクッとした手応え」が上肢にある現象のことです。
家族や施設介護者は医師以上に認知症患者の身体に触れているのですから、こういう症状にも気付かなければなりません。

現在のYさんの様子:
 ・車椅子で過ごすか、ベッドに臥床するだけの生活で全介助
 ・食事はペースト食、水分はとろみ(嚥下状態が悪くてむせるため)
 ・調子の良いときと悪いときの波がある
 ・意識障害ほどではないにせよ、いつも虚ろな目をしてボーとしている
 ・歯車現象がある(鉛管様筋固宿はない)
以上のことからDLBと鑑別してよいでしょう。

ただ気になることもあります。通常、DLBでは上半身が前に傾くことが多いのですが、Yさんは後ろに反り返ることが多く、移乗の際には上半身に力を入れて反り返ろうとします。また、眼球が横方向にはよく動くのですが、上下方向には動かないような感じです。加えて、無言でまったくしゃべらないことも気になります。

これらのことから、PSP(進行性核上性麻痺)も疑っておいた方がよいのかもしてません。但し、PSPと並んで、大脳皮質基底核変性症(CBD)も診断が難しいことから、両者をまとめて大脳皮質基底核変性症候群(CBS)と言うようになっています。

 
認知症医療・介護無責任連携の顛末

陽性症状がないことから、食べられなくても特養のユニットケアにて何とか暮らしているYさんなのですが、伝え聞くところでは有料老人ホームで暮らしていた頃には妄想や暴言があり精神科病院に入院していたとのこと。
それで退院後に当施設に移り変わって来たというのです。入所時に交付された情報提供書を見てみると、「認知症」との診断名が記載されていました。

現在は症状から明らかにDLBなのですが、入院当時にどのようなレベルの症状であったか詳細は不明なので何とも言えないのですが、有料老人ホームの医療連携先である内科開業医と精神科病院の診療なので、やっていたことは当てになりません。
これらの医療機関は、用法用量規定通りに抗認知症薬を使うとようなころですから。(以前、とんでもない迷惑を被ったことがあります)

陰性症状が酷くて食べられないため、食事介助に1時間程度かかるYさんですが、もし何かの病気で入院することになったらもう最後です。口から食べる経口摂取はおしまいです。医療連携先である大病院に入院すると、胃瘻か経鼻経管栄養になります。すると、もう当施設に戻ってくることはないでしょう。私の知る限り、過去に3症例そういう事例を見ているからです。

ある日、ケアプラン作成のために担当者がやって来ました。その人は介護支援専門員(ケアマネ)ではありませんが、仮に介護支援専門員であったとしても結果は同じです。
つまり、「介護は介護現場でできることを考える」という頑なな姿勢であり、「介護現場で困っている認知症の症状を治療はできないだろうか?」、「治療、即ち投薬は適切なのだろうか?」という視点がまったく欠如していることです。

やはり、施設入所受入時には、その時に服用している薬の妥当性を精査してみることが必要です。

実際、Yさんにはリスパダールという向精神薬が投与されているのですが、この薬が災いして食べられない、歩けないという状態を作り出していないだろうかと考えることが必要なのです。

「どうせ、ロクな状況ではなかろう・・・」という当初の予感は的中しました。


認知症教育が必要不可欠 

コウノメソッドで認知症を学べば、医師でなくても85%の精度で認知症を鑑別できると河野医師は述べています。実際、その通りのことを私は実感しています。
そこで見えてくるのが、「医者はちゃんと患者を治療していない」ということです。
その結果、介護現場はただその不適切な治療の後始末をさせられているのだということです。そして、ほとんどの介護スタッフ(看護師、ケアマネージャも含む)は、そのことに気付いていないということです。ある意味、哀れなものです。

日中の職員配置が比較的多い時も、夜間の少ない職員の時も、これらの方々のお世話で疲弊するだけの介護現場です。

施設入居者の入居受入時に診断と処方されている薬剤をチェックして、不適切な時には是正することができれば、それだけで入所前よりも穏やかになって平穏に暮らしていけると思います。「この入所者、症状が進行(悪化)してきたね」ということは、介護職が一番気付きやすいです。入所者に最も近くに居て、いつも様子を見守っているからです。

介護で困る状態にある入所者の存在は、他の入所者にとっても迷惑な存在でもあります。本来ならば受けられるであろう手厚い介護の機会を、その人たちが奪っているという事実があるからです。
介護はサービスなのですから、できるだけ高品質でありたいものです。
高い品質を維持するためにも、より良い治療につなぐ体制を施設で整備しておくことは極めて重要であるといつも痛切に感じています。

接遇や介護技能だけでなく、実践的で正しい認知症教育を施設スタッフが受けられる教育システムを有する介護施設は、地域で評価され成長を遂げるものと期待しています。
認知症急増の時代。きれいな部屋、おいしい食事、楽しいレクレーションの提供だけでは、他の施設と何の違いも特色もない、医療費と介護費を無駄遣いするだけのありふれた介護施設なのです。


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