2015/10/01

認知症は薬との関係で捉える

「ここは医療機関ではない!」、「医者の処方に口出しするな!」、「医者になればよかったのに!」、「介護は介護現場でできることを考えなさい!」 実際にこんなことを言われ続けても、言い続ければならないこと、それは「認知症は薬との関係で捉える」ことです。

こういう視点(問題意識)を常に持ち続けない限り、認知症の中核症状の悪化からも、周辺症状の悪化からも解放されることはありません。





9月27日、「一般社団法人 抗認知症薬の適量処方を実現する会が発足」というニュースが共同通信を発信元に全国の地方紙で一斉に報じられました。認知症医療問題のひとつが、ようやく的を得た関心事として取り上げられました。それも、全国紙ではなく、地方紙各社からです。


抗認知症薬の適量処方を実現する会 設立趣意書






これを受け、インターネット上でも多数の引用記事を閲覧することができます。





認知症の薬の使用規定により不必要な増量を強いられ、患者が怒りっぽくなるなどの副作 用が頻発しているとして、高齢者医療に携わる医師らが適量処方を推進する団体を26日まで に設立した。全国の医師や患者家族に呼び掛け、副作用の実態調査に乗り出す。
高齢化社会で認知症の増加が見込まれる中、投薬治療をめぐる問題提起がされた形だ。


問題提起は随分前からあったのです。「遅きに失した感」もあるのですが、まだ手遅れではないと思います。「遅い」というのは、抗認知症薬のアリセプトが登場したのが1999年のことです。現在、2016年。この間にどれだけ多くの人たちが大変な思いをしてきたかということです。

アルツハイマー病治療薬塩酸ドネペジルには最低用量の制約が設けられていたが、個々の患 者においては規定量の使用で治療に問題が生じることがあり、その場合少量投与が有益である 可能性が言われていた。



団体は一般社団法人「抗認知症薬の適量処方を実現する会(代表・長尾和宏=ながお・かずひろ=医師)。自民党の山東昭子参院議員が名誉会長に名を連ねる。医師の裁量で患者に合った用量で使用できるよう国などに要望する。

長い名称の会ですが、実に単刀直入で分かり易いです。


症状の進行を抑える抗認知症薬は4種類が承認されており、いずれも少量から始め、約1.74倍に増量するよう添付文書で規定されている。同会によると、規定量通りに投与すると興奮、暴力、歩行障害、飲み込み障害などが起き、介護の負担が増えることが多いという。逆に少量投与で改善する人もいる。

4種類の抗認知症薬とは、アリセプト(ジェネリック品もあり)、レミニール、メマリー、リバスタッチ(貼り薬)、イクセロンタッチ(貼り薬)のことです。


添付文書に「症状により適宜減量する」と記載されている製品もあるが、規定より少ない量で処方すると地域によっては診療報酬明細書(レセプト)の審査で認められない場合があり、効果的な少量投与を医師が控える状況だという。

同会は1123日に東京都内で設立総会を開催し、副作用の実例を公表。副作用とみられる症例や診療報酬の請求が拒否された事例を収集し、厚生労働省や製薬企業などに、適切な処方ができるよう求めていく。

我が国では、かつて薬害問題が生じたことがいくつもあります。今回の抗認知症薬の問題の深刻さは、数的規模の多さにもあります。



今回問題提起の重要ポイント
代表的な抗認知症薬「アリセプト」(一般名ドネペジル)を販売するエーザイは「臨床試験に基づき添付文書にある通りの用法用量で厚労省から承認されている。少量投与の有効性を裏付ける科学的根拠はないが、医師の判断で減量できると考えている。診療報酬の審査にコメントできる立場にはない」としている。 

ポイント1.少量投与の有効性を裏付ける科学的根拠はない
「科学的根拠(エビデンス)はない」と言っているのは、学会にて論文として発表されている文献はないということであって、裏付けとなる症例は無数に存在するのです。少量投与の有効性を裏付けるデータを元にした論文は、学会で発表しようにも受理されないという事実もあるのです。

ポイント2.医師の判断で減量できると考えている
「医師の判断で減量できると考えている]と、製薬会社は考えているだけであって、減量した処方はレセプト審査でカットされてしまう所もあるのです。



認知症医療問題はまだある!

問題提起されたこの増量規定の問題が解決すればそれですべてがうまくいくのかというと、それは違います。ただ問題解決のために必要なひとつのポイントをクリアしたに過ぎないのです。問題点を整理すると、概ね以下の3点となります。

 ・抗認知症薬の増量規定の問題
 ・向精神薬の使用を認めないかのようなガイドラインが策定されようとしている問題
 ・認知症を治せる医師が不足しているという問題

これら3点セットで解決しなければ、認知症問題は解決できないということです。それでも高齢者人口比率が増加の一途を辿る今日、我が国が直面している問題はまだまだあります。今回提起された「増量規定問題の解決」は、超高齢社会を幸せにするためには「足枷」となっていたひとつから開放されるに過ぎないのです。