2015/08/10

レビー・ピックコンプレックスの症例

レビー・ピックコンプレックス

診断ではなく分類としてレビー・ピックコンプレックス(Lewy-Pick complexLPC)が提唱されました。(河野医師、2012)レビー小体型認知症(DLB)は症状の進行につれ、介護抵抗などの陽性症状が出ることがあります。DLBは後頭葉に血流低下を生じているのですが、前頭葉に萎縮を生じることもあります。後頭葉血流低下による幻覚・妄想、前頭葉萎縮による介護抵抗などの迷惑行動を併せ持つ症状がLPCです。

ですから、おとなしかったDLBの人が屁理屈を並べたり介護に非協力的になり手がかかるようになったら、DLBFTDかと鑑別に迷うよりLPCだと鑑別すればよいのです。ただ、このLPCは一般の医師には広く知られている訳ではありませんから、コウノメソッド実践医かコウノメソッドを学んで認知症を診ている医師にしか分かりません。


DLBさえもちゃんと診断できない医師もいるのが現状ですから、LPC概念が一般に浸透するにはまだ時間がかかるかもしれません。
 DLBにアリセプト適用が認可されたが、LPCには興奮作用のため陽性症状を悪化させる。
 ・ピック症状にクロルプロマジン(ウィンタミン/コントミン)が有効であることを知らない。


レビー・ピックコンプレックス症例1

あるDLBの入所者は自力で食事ができ、おとなしくて手のかからない人でした。ただ、日中であろうと深夜であろうとお構いなしに、周囲からの刺激とは無関係に突然大きな声で同じ歌を歌い出すことがありました。この入所者はいずれピック化してLPCになるだろうと予測していました。突然歌い出すのは、「常同行動」であるとみていたからです。

やがて、テーブル前席の人のお膳に手を出し、おかずを盗って食べることがしばしばみられるようになりました。注意すると、「はい、すみません」と言うか黙っていました。まったくの無反省でテーブル隣席や前席の人のお膳に手を出す行為が続くようになりました。


ベッドから車椅子に移乗介助する際に、突然怒りだして抵抗し、移乗が終わると「ありがとう」とお礼を言うようなおかしな行動も出てきました。昼夜の区別なく、周囲への迷惑などまったく配慮することもなく、大きな声で終日歌い、独語が続くようになってきました。これだけのピック症状が出てくれば、LPCであると鑑別してよいです。

ただこの症例がDLBからLPCに進行したものと断定できない点もあります。
視線がまったく合わない、暗い表情、レム睡眠行動障害があるのでDLBだろうと推定はされます。一方、歯車現象、嚥下障害なし(むしろ早食い)、幻覚、妄想なし、なのです。


無反省、盗食、目の前にある物には何にでも手を出す(使用行動)があり、FTLD検査セットは0点で質問に答えず、取り繕いもありません。

以上のことからLPCと鑑別しましたが、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(DTNC)の疑いも否定できません。これはCT画像を見ないと分かりません。

介護現場ではよくありがちな常套句なのですが、「様子をみましょう」と言ってただ観ていても何の改善も見込めません。事実この症例の場合、周囲からの刺激とは無関係に大きな声を出すし、何度となく大きな声を出さないように注意したところで、まったく効果はありません。

 主な症状
  ・暗い表情で視線が合わない 
  ・大声で昼夜の別なく歌う
  ・独語
  ・盗食
  ・使用行動(目の前にあるものは何でも手を出す)


レビー・ピックコンプレックス症例2

主に食行動異常から気付いた症例です。おとなしくて手のかからない人です。但し、食事の際にお茶を床に捨てる行為があります。たぶん飲みたくない心理が働くのでしょうが、お茶の他におかずを床に捨てることもあります。

おとなしい時は極めておとなしくて妄想で何かブツブツ言っているのですが、介助抵抗するときには暴力を伴います。抵抗を示すために介助者に唾を吐きかけることもあります(実際に唾は飛んできませんけど)。このような行為は、アルツハイマー型認知症では見ることがありません。

夕食後の就寝介助では、パジャマに着替えるのを抵抗して大声をあげることもあります。ただ、臥床してしまえばおとなしく目を閉じ穏やかになります。

 主な症状
  ・幻覚(幻視)、妄想
  ・介護抵抗、暴力
  ・歯車現象


レビー・ピックコンプレックス症例3

あるショートステイ利用者のLPCを鑑別するには時間がかかりました。トイレ要求が頻繁にあり、ご飯だ、帰るだの、家族を捜すだの、要求訴えの多い人でした。穏やかな時に話しをすると、きちんとした会話は成立しました。「その場取り繕い」の話しはありません、問いかけには真偽は別として理路整然としたことを言います。

時には、屁理屈を並べて自分の身勝手な要求を通そうとすることさえもあります。頭脳明晰という感じなのですが、FTLD検査で「サルも木から~」、「弘法も筆の~」が答えられたり答えられなかったりと、一定しません。認知機能が変動するようで、介助するその時々で状態がコロコロ変わります。

特に用事がある訳でもないのに立ち上がり、転倒することもあります。僅かですが上肢に歯車現象がありますから、DLB初期ながらも前頭葉症状のあるLPCとみてよいでしょう。

この人はショートステイ利用でつなぎ、何処かの施設受入を待っているようでした。ある病院を受診してはいましたが、認知症としての治療は受けていないです。LPCを知らない医師が圧倒的多数でしょうから、「LPCだろうと思います」とでも初診の問診で介護者が言わない限り診断が難しい症例だろうと思います。
やがてこの人はショートステイに姿を見せることはなくなりましたから、何処かの施設に入所したのでしょう。優秀なケアマネが付いていて、うまく治療に繋ぐことができていればよいのですが、それは宝くじに当たるくらいの確率かもしれません。

 主な症状
  ・日によって変わる調子(体調)
  ・変動する認知機能
  ・頻尿訴え
  ・我が儘を超える要求訴え


以上のような状態(症状)をみて、「これは一体何だろう?」と思い腑に落ちないのですが、LPCを知っていれば鑑別は可能です。ただ、外来の初診30分枠で医師が診断できるのかというと疑問です。一見してそれと分かるDLBの症候はありませんし、前頭側頭型認知症とするにしても顕著な症候はありません。こういう症例にこそ、介護者が症状の特徴を詳細に把握して医師に伝える能力が必要なのです。

上記の3症例はいずれもLPCとして治療を受けていません。そもそもDLBを知らない介護職員と看護師が日常生活のお世話をしているのですから、LPCを知る由もありません。治療を受けるように助言してはいるのですが、認知症リテラシーの低い人達には理解できない話しです。
結局のところ、「迷惑行為」に我慢するだけの現状が続くだけです。

近年、DLB患者が増えていると言われています。認知症全体の概ね20%DLBであるようで、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。DLBもまた神経変性性の認知症なのですから、純粋にDLBのままであり続けるよりも、いずれはLPCに移行する可能性があるということを念頭に入れて観ておくことが必要です。

進行を遅らせるという「長期戦」に備えるためには、フェルガード100Mを用いるのが最も手堅い選択肢です。これは薬ではなく、サプリメント(健康補助食品)なのですから、処方箋は要りません。特に副作用もありません。入院患者に飲ませるには主治医の理解が必要なのでいくらか実現が難しいかもしれませんが、施設入所者であれば希望した通りに飲ませてくれるでしょう。


余談になりますが、認知症患者を施設に入れたら、「入れっぱなしの預けっぱなし」という家族は無責任です。そういう家族以上に施設職員はある意味無責任なのですから、家族にできることは家族が何でもやる姿勢もまた必要不可欠なのです。
何故なら、認知症患者はその認知症型を問わず、その進行に合わせた治療を受けている人はひとりもいませんし、LPCもまた例外ではないのですから。