2015/07/19

認知症学のススメ (7)



今ではほとんどお目にかかることもなくなったチューナのフロントパネルはこういうのが一般的でした。すべてがアナログ。チューニングメータも、周波数を表示するダイアル表示も指針による方式です。
アルミ削り出しのチューニングダイアルには、回すと心地よいトルクがあります。これでお気に入りの番組を選局するのです。FM東京をキーステーションに放送されていた「ジェットストリーム」を聴くのが楽しみでした。
初代ナレータに城達也氏(故人)。現在も続いている長寿番組なのですが、今はもう聴くことはありません。

チューニングメータが薬の効果を示す指針。周波数表示パネルが薬の処方量。チューニングダイアルが家庭天秤療法。オタク系の私はこういうふうにイメージがダブって思えるのです。


それで、チューニングダイアルで一体何を回していたのかというと、バリアブルコンデンサ(通称:バリコン)を回していたのです。バリコンはロータとステイタという2種類の極で構成され、重なり合う極の面積に応じて容量が変わるのです。

容量が変わることによって同調する周波数を可変して、希望する周波数のラジオ局を選ぶのです。このバリコンの大きさは、例えて言うと、豆腐半丁ほどの大きさがありますから、現在ならばポケットラジオの方が小さいことになります。









今は、もう何回読み返したか分からないくらいに読んだ、「コウノメソッドでみる認知症診療(日本医事新報社)」を読んでいるのですが、毎回初めて読むかのように新鮮です。ただの記憶力が悪いだけのことでしょうが、いまだに新発見があるのです。

読んでは認知症患者の様子を観て確認する。逆に、認知症患者の様子を観ては読んで確認する。日々の介護業務は単調で、同じことの繰り返し、時にはただ虚しいだけの「作業」でもあります。
「感動」、「感謝」、「尊敬」・・・などという、「美辞麗句」を並べて語るには程遠い世界でもあります。

何故そうなるのか・・・ ひとつの理由に、認知症の陽性症状があります。何度となく制しても言うことを聞かない迷惑な常同行動。要らぬ動きで介護の妨げにしかならない四肢の動き。大きな声で叫ぶ、唸る、泣く。陰性症状では、食べない、遅い嚥下動作があります。




実は「認知症=記憶機能の障害」とだけ捉えて、認知症の中核症状の改善だけに治療が向かうと弊害も大きいのです。睡眠時間や質、排便・排尿の状況、生活環境や周囲の状況変化などの周辺症状変化(不穏、傾眠など)、声かけの仕方にも気にかけておくべきですが、これらのことだけしかみていないことが圧倒的に多く、認知症の周辺症状の変化を理解して、治療することはもっと重要なのです。

「我慢するだけの介護」から、「喜びを創出する介護」に変えていくことも必要です。そのためにはどうすれば良いのか。 いくつもの具体的方法が「コウノメソッドでみる認知症診療」にたくさん記されていますから、医師のみならず介護者も読んでみることです。して実際に適用してみることです。

家庭天秤療法はチューニングです。ダイアルを回して希望する局の周波数に合わせるように、適切な種類と最適な服用量を探り出すよう調節するのです。高齢者は薬剤に敏感です。とても感度が高くて許容される狭い範囲に限定されます。だから、ダイアルは慎重かつ丁寧に微調整しなければならない、極めてアナログなことなのです。