2015/07/09

認知症学のススメ (6)

施設で暮らす認知症高齢者をお世話していると、「結構、虚しいことをやっている」とか、「きつい割には報われない」などと思うものです。そして、「昔のわたしは、こんなふうじゃなかった。もっと優しいひとだった」などと同僚のおばちゃんが自省していました。わたしだって、そうです。同じです。


「生産性」、「創造性」といったポジティブな作業(業務)は介護現場にはほとんどないのです。どういうスタンスで臨むかは、その職場なりその人なりにまちまちなのでしょうが、あまり好い心理的労働環境ではないようです。

特に、要介護度の重くて(従って、認知症は重症化している)、寝たきりか離床していれば迷惑なだけの存在でしかない陽性症状の酷い施設入所者が多い特養などは、「生産性」とか「創造性」とは程遠い世界なのです。施設入所者とのコミュニケーションもままならず、暴言・暴力、介護抵抗、大声などに我慢しながらストレスに耐え続けるだけの現場労働というのは虚しいものです。こういう背景も離職者が多い一因なのでしょう。

介護は資格があろうとなかろうと誰にでもできますが、終わりの見えない介護を続けていると「燃え尽き症候群」を生じることもあるでしょう。「仕事に興味が持てなくなったり、自分が役にたっている実感がすくない」という気持ちに駆られるのは想像に難くはありません。

だから、でもありそれだからこそ、認知症のことについて学んで介護に活かすことも必要なのです。
働く意味や意義をどこかに見出して、それを糧とする姿勢が必要なのです。「働いてナンボ」だけでは到底長続きはしないのかもしれません。

最近、あるところに記事を投稿したのですが、その制作過程でたくさんの資料をインターネットで検索して読みました。インターネット全盛の今日、実に有益な情報源もあれば、ちっとも役に立たない情報に溢れていることに改めて気付きました。やはり、書籍としてきちんと著されたものの方がいいですね。ただ、動画・ビデオというビジュアル系の媒体は文字媒体と異なる、今風の強力な教材です。今回は認知症をビデオで学ぶとして、集めてみました。


アルツハイマー型認知症 (国立病院機構 菊池病院, 木村武実院長)
血管性認知症 (同上)
BPSDの見極めと頻度について  (同上)
コウノメソッド勉強会 (厚地脳神経外科病院 平山貴久先生)







アリセプトに次ぐ、次期抗認知症薬は根治薬となるのか?! 期待と不安で興味津々。東洋経済に次のような記事が出ていました。
医薬業界で初めて認知症薬を発売したエーザイ。次の一手に注目が集まっている。世界に約4400万人いる認知症患者のうち、6割前後を占めるのがアルツハイマー型だ。従来の薬は認知機能の低下を遅らせるものだが、同社は根本治療につながる次世代薬の開発を進めている。その展望を内藤晴夫CEO(最高経営責任者)に聞いた。      ──開発中のアルツハイマー型認知症薬は、どんな点が新しいのか。
発症後ではなく、症状が現れるよりもはるか前に根本的な原因にアプローチする、先制医療であるということだ。認知症の原因に関する仮説の一つは、脳内に徐々に沈着した「アミロイドβ(Aβ)」というタンパク質が、神経細胞死を引き起こし、認知機能が低下するというもの。この仮説に基づけば、Aβの産生を抑え、除去することで、認知症を予防し、治せる可能性がある。 東洋経済(15/07/04)より引用
現在の抗認知症薬は、アリセプト、メマリー、レミニール、リバスタッチ/イクセロンタッチの4種類5製品なのです。用法用量の規定で一定量まで増量することとなっており、「薬害」とも言える副作用のため介護現場が介護に難渋する一因ともなっているのです。

いずれもいい薬なのですが、副作用にはあまり目もくれず作用だけを強調する製薬会社の姿勢、並びに製薬会社御用達学者の「宣伝活動」とも言える啓蒙活動には憤りを禁じ得ないのです。
加えて、医者の勉強不足、不適切な診断に基づく無益な処方も同様です。
「このおばあちゃん、ピックぽいね」と、明らかに前頭側頭型認知症(FTD)なのにアリセプト。「このショートステイ利用者、意味性認知症(SD)だよね!」と、分かったので持参した薬のリストを見たらアリセプト。

こういうお粗末な現状を変えていかない限り、例え新薬が登場しても現状とさほど変わらない将来が待っているのです。ひとつには、万能薬などというのはこの世に存在せず、副作用のない薬もまた存在しないのですから。また、開発中の新薬はATD治療用であり、その他の認知症には適応外ですから。