2015/06/08

認知症学のススメ (3)

介護報酬が減額された影響か、ただ単に募集しても人が集まらないだけなのか知らないけれど、以前は3人で介護業務を遂行していたところを2人(時々3人)でやり繰りする日々・・・ 疲れますわぁ~!
過去1年余りを振り返ってみると、10名くらいの人が離職しております。何処も同じ、介護業界は定着率の良くない業種ですね。数量だけではなく、質もまた良好とは言い難い「サービス業」なのです。
サービス業なのですから、できる限り質の良いサービスを提供したいもの。

認知症患者を支える基本である「家庭介護」ができなくなると、家族が離ればなれに暮らさざるを得なくなります。家庭介護の崩壊です。おとなしいタイプの周辺症状であれば何とか家庭で世話を続けることもできるでしょうが、易怒・暴言・暴力などの陽性症状があるともうお手上げ状態です。

こういう認知症患者が施設に入所して来ると、介護現場は大変なのです。だから、施設によっては面接時に集団生活が無理と判断すれば、入所を断る場合もあります。それで、行き場のないまま入所受け入れ先が見つかるまでショートステイで繋ぐ人もいます。

ショートステイでつなぎ、入所できたからといって安泰ではありません。特段の治療を受けるでもなく入所したのですから、症状が変わるわけでもなく陽性症状(易怒、暴言、暴力)は続くのです。始末に悪いのは、何かの病気で入院することになったら、その入院先でも看護に手を余してナースステーションで24時間監視するというようなことも生じるのです。こうなると、「医療連携」における負の連鎖の始まりです。

実はこういう事態になることは、施設としてはとても恥ずべきことなのです。「まぁ~、こんな状態でよく看ておられる、大変ですね」と同情されるのではなくて、「こんな状態になるまで、よくほったらかしにできますね!」と批判されて然るべきことなのです。

結局のところ、介護費も医療費も有効に使われるでなく、無駄な介護費と医療費が積み重ねられるだけで、国に多額の支出を負担させることになるのです。その推定金額、年間14.5兆円! ある意味、認知症への無関心と無責任、不勉強が相乗して生み出した支出とも言えます。




20136月に厚生労働省から発表された「認知症有病率等調査」の結果は「高齢者の約15%,推計462万人」というものであり,驚かれた方も多いと思われる.
 それに比して,201312月時点の日本認知症学会の認知症認定専門医は840日本老年精神医学会の高齢者のこころの病と認知症に関する認定専門医は880であり,合計1,720名に過ぎない.そして,この一部は重複するため,実際には1,500名程度であろう.これは,専門医1人につき3,000人あまりの認知症患者を担当する計算になる.また,これとは別に軽度認知障害(MCI)の人が約400万人いると推計されてい
る.これを含めると,専門医1人につき5,700人あまりを担当しなくてはならない.仮に1人の専門医が月曜日から金曜日まで毎日10人の新患を診たとしても,全員を診るのに2年以上かかる計算になり,現実には不可能な数字である.したがって,今後は「かかりつけ医」,「認知症サポート医」が果たす役割が極めて重要になる.診断や治療・ケアがむずかしい症例は専門医に委ねるとしても,典型的な症例や診断・治療が容易な症例は始めからかかりつけ医,サポート医に委ねられる.また,専門医が診断した患者の日常診療を受けもつことも期待される.  かかりつけ医のための認知症診療テキスト: 実践と基礎 著者: 田平武 発行: 診断と治療社 より転記引用

認知症を診てもらえる医師は少ないのが実情です。一応、「専門医」ということになっている医師は、約1,500人というのですから驚きです。
実際問題、学会認定医だからといって、治療を任せきりでいいのかと言うとそうではない実態があるのです。ある意味、「医者を信用するな」と思っておいた方が賢明なのです。
とは言うものの、「○○学会認定医」という言葉には弱いです。認知症以外の診療科目であれば、認定医を信頼してもよいのかも知れないですが、歴史の浅い認知症診療はハナシは別です。

「医者任せにしない」とか、「医者を信用するな」と言っても、医師と対峙することではなく、お互いに協力する「治療同盟」の関係を結べばよいのです。認知症の人を一番よく見ているのは医師ではなく、身近にいる介護者なのです。介護者がしっかりと認知症を学び、医師が診察時に的確に判断する情報を提供できるようになればよいのです。


認知症の陽性症状(手のかかる迷惑な症状)を適切に抑えることができれば、介護のストレスを減らすことができるのです。このような治療効果を手に入れて「楽しい介護現場」に変えるには、治療できる医師の存在は必要不可欠なことですが、同時に認知症を正しく学んでいる介護職員の存在もまた必要不可欠なのです。



経費節約のため、尿取りパッド1枚無駄にしない取り組み(排泄誘導の工夫)も大切なことなのですが、不必要・不適切に処方されている高価なアリセプトを中止させることの方が医療・介護経済のうえで重要なことなのです。

認知症の薬で、中核症状も周辺症状も同時に抑えることができる治療薬は存在しません。できるかぎり少ない種類の薬を、できる限り少ない副作用で、しかも安い薬代で、最大限の効果が得られるようにする必要があります。
「認知症の周辺症状には、非薬物療法で対応する」ということになっていますが、それは必ずしも現実的な方法ではありません。時間的・人員的要因で無理ですし、あまり効果的な方法とは言えません。やはり、薬による適切な治療が先なのです。