2015/04/04

認知症医療村はどう責任を取るのか(1)

説明責任の行方 ・・・ そして、結果責任を負うのは誰?
「責任」には、「説明責任(accountability)」と「結果責任(responsibility)」のふたつの意味があります。説明責任とは、社会に影響力を及ぼす組織で権限を行使する者が、直接的関係をもつ者だけでなく間接的関わりをもつすべての人・組織にその活動や権限行使の予定、内容、結果等の報告をする必要があるとする考えをいうのです。
一方の結果責任とは、故意・過失の有無にかかわらず結果に対して責任を負うことです。



副作用が大きいのは抗認知症薬も同じでは・・・
「薬50種『中止考慮すべき』」と題して、「高齢者の安全な薬物療法指針」が改訂予定であることが報じられました。

日本老年医学会などは、副作用が大きいために高齢者への使用の中止を医師が考慮すべき薬を約50種類挙げた一覧を作成した。10年ぶりに改定予定の「高齢者の安全な薬物療法指針」の中に盛り込むという。

ここで「中止考慮すべき」と見出しにかかれても困る薬もあるのです。いたずらに不安感を煽っているだけのようにも思えます。
また、この記事の表にある薬で、「三環系抗うつ薬」が一例として挙げられていますが、現在の主流はSSRIです(「使わないようにしましょう」と言われても収益に与える影響は少ない)。逆に、抗認知症薬は当然ながら入っていません(「使わないようにしましょう」と言われたら収益に大きく影響する)。
このことから何が読み取れるのかというと、マスメディアと広告主でもある製薬会社との利害関係です。「自主規制」をしているのでしょう。

「ガイドライン改定にあたって」の「目的と経緯」より
 特に推奨度の決定では、常識的なことは研究対象にならないというエビデンスの盲点高齢者ではエビデンスが乏しい点を考慮して、エビデンスが不十分でも、推奨度を積極的に判定するべく研究グループ内で討議と投票を重ねた結果をコンセンサスとして取り入れた。
また、安全性に主眼を置く点で治療ガイドラインとは異なる主旨のガイドラインであるが、有効性のエビデンスや疾患別ガイドラインも参照してリスク・ベネフィットバランスを検討するよう心がけた


 以上のようにもっともらしいことを心がけて謳っておきながらⅢ領域別指針 精神疾患BPSD(p.18)では、抗精神病薬全般の使用を全面的に止めて抗認知症だけを使いましょうということを強く指示しています。

これでは、「ガイドライン改定にあたって」の「利益相反の確認と公開」にある、「認知症医療村」の村人への最大限の配慮を隠しつつ、アカウンタビリティを果たしているフリをして、レスポンシビリティだけは主治医か介護関係者に負わせるという構図が読み取れます。厳密には主治医ではなく、介護関係者という方が正確で現実的なのです。

左の画像では小さくて見づらいので、一部を下に拡大表示しました。要するに、「製薬会社と金銭絡みのある者は、このガイドライン策定に関与してはいけません。何故なら、特定の製薬会社に有利になることを書くことになるからです」と言っているのです。


これはもう、政治家と企業の間でよく問題になる政治献金問題と同じ構図です。政治資金規正法というのがあって、それなりに自浄作用があるのでしょうが「抜け道」もあります。
「利益相反の確認と公開」ということで、一見するといかにも正直に公開しているようなフリをしていて実は「抜け道」があるのでしょう。委員の所属学会への寄付(機関誌への広告料、学術集会支援なども含む)が抜けているように思えます。



このBPSDの章を熟読して解ること;
 ・専らアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症のBPSDについてしか言及していない。
 ・古くからある薬はどれもBPSDに対して効果がないとしている。
 ・コリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトなど)にこそ、BPSDに効果があるとしている。
以上のような主旨を主張するために都合の良い論文を恣意的に集めてエビデンスのあることのように解説しているのです。


一般的な話しとして、英語で書かれたドキュメントというものは書籍であれ、論文であれ、何にせよとても高等で価値のあることのように思ってしまうものなのです。これは、日本人特有の欧米文化圏への憧れと劣等感に起因することなのです。実は、私もそのひとりですから、有り難がって読みます。

しかし、よくよく考えてみると、(実はお粗末ながらも)日本の認知症医療は世界トップレベルにあるのです。にもかかわらず、このガイドラインで引用文献にリストアップされた文献の著者の大半は日本人ではありません。だから、英語の文献に記されたことが必ずしも信頼性が高いとは言い切れないのです。


まとめ
 ・ガイドラインは、特定の製薬会社の利益を優先する内容になっている。
 ・学会と製薬会社との間に存在するカネにまつわる関係を露呈している。
 ・認知症患者と介護者の苦労も悲惨な現実もまったく考慮していない。
 ・認知症も、BPSDも熟知していない人達が、論文だけを根拠に無責任なことを論じている。
 ・マスメディアは顧客である製薬会社の利益を配慮して、自主規制した内容だけを報じている。
 ・既存の認知症関連学会は、認知症を治せないということを認めている。
 ・ガイドライン初版から10年、認知症医療界は一体何をやって来たのか甚だ疑問である。
 ・認知症医療における「エビデンス」とは何かを考える時期にあることを問われている。
 ・「原子力村」と同様、「認知症医療村」という存在があって、社会に深刻な影響を与えている。