2015/04/18

認知症介護通信15/04/18

氷山の下にはもっと大きな氷塊がある
海面に浮かぶ氷山は全体の10%で、残りの90%は海面下にあるという。膨大なデータ(海面下)に裏打ちされた結論(海面上)が、「認知症は治せる」というのであれば、それは事実として素直に受け入れておく方がすっきりしていいものです。
海面下の氷塊
認知症の施設利用者のお世話をしながら、症状を毎日のように観て理解を深めていくこと。とても地道なことなのですが、継続していくうちに段々と氷塊が大きくなってきます。

海面上の氷山
海面下の氷塊が大きくなるにつれて、海面上の氷山は次第に大きくなってきます。

最近は、「ピック病の症状と治療」(フジメディカル出版)を読んでは、施設利用者の様子と照らし合わせてみることをくり返しています。もう、この本を何度読み返すことだか? 忘れっぽいということもありますが。だから、「発見」というのも度々あります。

書物というのは、その1冊にすべてが書かれている訳ではありませんから、更に理解を深める必要があればインターネット検索して知識を拡げていきます。インターネットがなかった時代には、関連する本を買って読んでいたのですから、ある意味でいい時代になったものです。

ただ気を付けておかないといけないのは、無数にある情報の中から信じてよいこと(信頼できること)なのか否かということを常に忘れないことです。どこもかしこも、「認知症には非薬物療法で対応しましょう」と書かれていることが多いのですが、それは極めて難しくてとても非効率的であり、現場の実情をあまり知らない机上の空論です。


コウノメソッド診断機器登場
2015年4月、「KMナビ」という、認知症を診断するソフトウェアが発売されました。これは、上に書いた「海面下の氷塊」=「診断経験」をプログラム化したものと例えていいのだろうと思います。画面に表示された情報(導きだされた診断)が「氷山」というわけです。
永年の経験に裏打ちだれた「匠の技」という職人芸の伝承というのは、どの分野でも必要不可欠な
ことです。特にコンピュータ化(自動化)というのはあらゆる分野で進められてきました。これを達成したからこそ、「技術立国・日本」の今日があるのです。

「匠の技」とか「職人芸」と称される技能・技術はどれも皆アナログなのですが、コンピュータは言うまでもなくデジタルです。でも、昔々はアナログコンピュータも実在していました。私が学生だった頃には、使われなくなったアナログコンピュータがホコリを被って研究室にころがっていました。

そういう昔話しはさておき、ここからは眠れぬ夜に私が空想したお話しです。空想を重ねるうちに妄想となり、やがては構想となり、東の空が白み始めました。こういう夜が3日続きましたので、名付けて「三夜物語」。



KMナビは、臨床現場で認知症診断に役立つソフトウェアであり、患者とその介護者の問診から得たデータを入力することで、CT画像を見なくても認知症の診断ができるツールなのです。

このKMナビ開発段階で話しをお聞きした時、診断に役立つのだろうと、漠然と思いました。入力したデータは、「診断時に役立つ、その場限りのデータ」という意味です。

ところが、ネットワーク、ビックデータ・・・と、拡がるデータの活用をあれこれと妄想、いや構想するうちに気付きました。 「J-ADNIだ!」

臨床研究ではアルツハイマー病の治療薬開発に欠かせない病気の進行過程を忠実に示す客観的な評価法の確立を目指しています。客観的評価法が定まれば、将来、アルツハイマー病の早期診断、予防、そして治療薬のスムーズな開発に繋がる非常に意義のある臨床研究となりますが、その客観的データを臨床現場から収集・解析するのがJ-ADNIなのです。

そこから、アルファベットで”J”の次は”K”ですから、K-ADNIだ! ピンとひらめいたのです。


Kono method - Advanced Diagnosis of Neurofibrillary Tangle and data Integration
(コウノメソッドー神経源線維変化の先進的診断とデータ集積) 

臨床現場での診断と治療におけるKMナビの活用は、今そこにいる認知症患者・家族にとってはとてもありがたいことなのですが、全国からデータを集積すると個々の端末では見えてこなかった新しい発見に繋がるのではないかと期待されます。以下、私の妄想的期待・・・
 ・ピック病の認知症に占める割合 (概ね15%前後だろうと、私の経験で推定しています)
 ・FG療法の効果持続期間 (FG療法:フェルガードとグルタチオンの組合せ治療のこと)
 ・CBD、PSPの発生頻度 (1万人に数人という推計に疑問があるから)
 ・エビデンスとはならなくても、「認知症は治せる」という膨大なバックデータ


町医者連合体のK-ADNIは即効性のある臨床現場型。認知症医療村のJ-ADNIは基礎研究型で将来の認知症根治を目指す(現在のところ、うまく進んでおらず、結果が出るのはいつのことになるのか分からない)。うん・・・、いいかもしれない。

【注記】これはあくまでも私がみた「三夜物語」(妄想、もしくは空想)です。



無責任な人々
前に「認知症医療村はどう責任を取るのか」と題して2回に亘って書いたのですが、これはある意味日常の介護現場からは遠い世界のことです。さてさて、身近なところに目を転じてみると、こういう無責任はいくらでもあるものです。

Hさん(94歳)はとても穏やかに暮らしているアルツハイマー型認知症(ATD)の人です。軽い脳梗塞もあり、最近入院して幸いにも施設に戻ってきました。それで以前よりもお世話するのに手が掛かるようになったのですが、施設で十分暮らしていけるレベルです。

ただ気になるのは、いつも「お願い、お願い」、「ありがとう、ありがとう」、「分からん、分からん」とソフトな声で叫んでいることです。ピック症状、レビー症状を思わせるような感じではありません。たぶん、元々からあるATDに脳梗塞の影響が加わってしまい、混合型認知症と言って差し支えない症状なのでしょう。

そうなると、服用してきたアリセプトの量を減らしてグラマリールを追加するなどして、症状に合わせた処方変更でまた以前のような穏やかな生活を取り戻せることも期待できます。同じことを1日中繰り返し言っているのは「陽性症状」なのですから、「抑制系薬剤」を使うことで抑えられるはずです。他にも、プレタール、プロルベイン(健康補助食品)という選択肢もあります。

こういうことは分かりきったことなので、看護師に言ってみたのですが、案の定理解されるでもなく、何にもすることなく放置されています。適切な認知症教育もない介護現場というのは、実に無責任なものです。