2015/03/21

認知症介護通信15/03/21

側頭葉から前頭葉への認知症治療標的のシフト

日々、認知症患者(施設利用者)のお世話をしながら様子を観察していて思うことは、記憶障害と徘徊のアルツハイマー型認知症(ATD)よりも前頭側頭型認知症(FTD)への関心をもっと深めるべきであるということです。何故なら、ATDの人は大抵の場合穏やかに過ごしていることが多いのですから、転倒や怪我などの事故防止のために気を付けて見守ってあげれば良いのです。

一方、FTDの人となると事情が変わってきます。実際の介護現場ではこうなります。
 ・同じことを何度も繰り返し尋ねるが、逐一対応できない
 ・「おしっこ、おしっこ」と頻繁にトイレに行くことを要求する
 ・大きな声で唸り続ける
 ・隣席の人のお膳やおやつに手を出し、勝手に食べる

大体こういう人達は見守りの目が届きやすいように同じテーブルを中心に寄せ合わせられます。夜であれば、夕食が済んで就寝介助するのですが、それがすぐにできない入所者もいます。
 ・ベッドに寝かせてもすぐに起きてくる
 ・寝かせると、大きな声で騒ぎ周囲の迷惑になる
 ・仮に眠っても、暫くすると目が覚めて動き出す

経験的に言って、こういう入所者の大半は前頭側頭型認知症(ピック病)なのです。個人情報が綴じられたファイルを調べてみると、そこに「アルツハイマー型認知症」と病歴欄に書かれていても大抵は誤診なのです。ただ一部にアルツハイマー型認知症が進行したためにあたかもピック化したような症例はあります。

このように見ると、前頭側頭型認知症を知らない施設職員/スタッフでも、実はこの認知症をちゃんと鑑別してはいるのです。ただ認知症に関する知識が足りないだけなのです。むしろ、前頭側頭型認知症をアルツハイマー型認知症と誤診するような医者よりも鑑別能力はあるのかもしれません。
最近、河野先生の「ドクターコウノの認知症ブログ」に以下のような記述がありました。





前頭側頭型認知症(FTD)は前頭側頭葉変性症(FTLD)が原因となって生じる認知症なのですが、症状が多彩であり、ATDと誤診されている患者が多いです。実際、私がお世話している施設利用者(入所者・ショートステイ利用者)のFTD患者全員が誤診されています。

前頭側頭葉変性症を理解するには1~2年の時間がかかりました。CT画像を見ることもなく、症状をずっと観続けてきただけなのですが、前頭側頭葉変性症の理解はATDの理解を深めると言っても過言ではないと実感しています。


進行性核上性麻痺(PSP)を鑑別したのだけれど・・・
「コウノメソッドでみる認知症Q&A」(日本医事新報社)を2回精読したあと、「ピック病の症状と治療」(フジメディカル出版)を読み返す今日この頃。この本を一体全体、何度読み返すことだか。因みにこの本には、河野先生のサインをいただいた私の「座右の書」なのです。

ごく最近、進行性核上性麻痺(PSP)の人を見つけました。施設に入所してきた時から、どことなく感じる奇妙な印象を拭えないままお世話をしてきたのですが、眼球が左右には幾らか動くものの、上下にはまったくと言っていいほど動きません。
顕著な「アルツ感」も、「レビー感」も、「ピック感」もほとんどなく、それでも「どことなく腑に落ちない認知症」を感じていました。

「目だ!」と思った私は、その利用者に私の指を見て追うように言いました。顔の前で指を左右に動かし、眼球がかろうじて追従して動くのを確認しました。しかし、上下方向にはまったく動きません。「あっ!PSPだ!」と確信しました。私はこれで同じ施設内(入所定員70人)で、2症例のPSPを鑑別して見つけ出したことになります。因みに、2人共にPSPとの診断はありません。

この人の場合もやはり、いくつかの医療機関や老人施設を経て現在私のところで暮らしているのです。私が気付くよりずっと以前に、どこかの医療機関で適切に診断されていないものかと憤りをおぼえます。さらに始末に悪いのは、「あの人はPSPですよ」と知らせてもちゃんと取り合ってもらえないことです。 

私は既に大脳皮質基底核変性症(CBD)を同じ施設で2例鑑別していますし、PSPも2例目となりました。どんなに親身になってお世話していても、この2疾患の辿る先にあるのは誤嚥から経鼻経管栄養となって、最期まで施設でお世話することができず退所となります。

こうなるともう、「コウノメソッドでみる認知症介護 -ムダな介護よ、さようなら-」と題する本でも書いたろか! と、怒り心頭なのです。

【参考資料】 進行性核上性麻痺 診療とケアマニュアル



最近流行の昔の歌
Mさんとは7年来の知り合いです。私がデイサービスを離れる5年前には両手引きで歩行介助して歩いていたのですが、現在は車椅子生活です。それが数ヶ月前、私の勤務する施設に入所しました。私のことをちゃんと覚えていてくださったことは嬉しかったのですが、リウマチのため歩けなくなっていたのはショックでした。

まだ年齢相応の認知機能の低下(MCIとは鑑別できない程)なので、入所時に家族が持ち込んだCDプレーヤーで昭和時代の懐かしい歌を聴いて過ごしています。時々、私が同室の入所者も巻き込んで一緒になって歌ったりもしています。介護の本質は、笑わせてナンボの「エンターテイメント」にあるのです。

「ブルー・ライト・ヨコハマ」 私が小学生の頃に流行った歌です。「懐かしいねぇ~♪」と言って、一緒に歌い、歌詞に合わせて移乗介助中のばあちゃんをギュッと抱きしめたりしています。セクハラではありません。私の介助をことのほか喜ぶ入所者への「ファンサービス」なのです。(笑)

来年3月、パシフィコ横浜で「第2回認知症治療研究会」が開催されます。「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌いながら、アタマの中はこれに照準を合わせて、あれこれと考えているのは言うまでもありません。