2015/02/14

認知症介護通信15/02/14

ザ・ピック ・・・ かなり呆れた症例
新しくショートステイの利用者を受け入れました。
「この人、ピック病(前頭側頭型認知症)なんだろうね」と、直感したのですが、やはりピック病でした。

第一印象・・・奇妙な感じ、ややびっくりまなこ、大きな声で叫びまくり
(この段階で概ねピック病だと仮の鑑別がつきます。)

忙しい上に、休日明けだというのに疲労困憊の体調だし、その新しい利用者の見守り役でもないから、時々様子を観察するだけの私でした。

これまでにピック病であると鑑別したショートステイ利用者は5人以上います。ショートステイ利用者総数は大体40人ほどなので、10%以上がピック病を占めることになります。ちなみに、全員がピック病と診断されていません。(ピック病であると正しく診断されている人にまだ会ったことがありません。)
ほとんどの場合、アルツハイマー型認知症との診断とアリセプトの処方なのですから、効果があろうはずもなく介護負担が増すだけなのです。ただ、この利用者はアリセプトが一旦処方されてはいたものの、現在は服用していません。

鹿児島認知症ブログでは、外来での自験例でFTLDの占める割合が14%となっており、私の遭遇した事例も概ね同じようになります。施設入所者で算定しても、やはり10%台になります。ただの偶然なのかもしれませんが・・・
認知症外来に訪れた認知症患者のグラフ化
平山先生の自験例内訳
利用者の昼食を終えてから職員の昼休みとなります。件の利用者はベッドに寝かされていました。あまりにもうるさくて他の利用者に迷惑がかかるからです。ベッドに寝かされて、「警察を呼んでください。殺される!」などと大声をあげていました。

私はピック病であることを確かめるために、ベッドの横でひざまずき支離滅裂の話しに付き合うことにしました。「何処の警察ですか? ○○署ですか、□□署ですか?」などと話しを合わせて止めどなく話しが続きました。

いくらか話しの「波長」が合ってきたところで、FTLD検査セットをやってみました。
 ・利き腕はどちら? ・・・ 右よ、こっちの方が力が入る
 ・右手で肩を叩いて ・・・ 沈黙して無動
 ・「猿も木から落ちる」の意味は? ・・・ 無言
 ・「弘法も筆の何?」 ・・・ 無言
「やっぱりね、ピック病だね」と思いました。

職員の昼休みが終わると、入居者が集まってレクレーションの時間です。遠巻きに様子を見ていると、他の人たちと一緒になって歌をうたったり、手をあげて体操をしていました。

どうもこの利用者は、独りにされると逆上して叫ぶ傾向にあるようです。だからでしょう、しきりに娘さんの名前を大声で呼び続けていました。これだけのピック病の症状があるにも拘わらず、診断がアルツハイマー型認知症です。そして、一時期アリセプトが処方されていたのです。
同僚の職員は、「こりゃ~、家族が大変だろう」と同情していましたが、私は「
このくらいのピック病も診断できないのか!」と呆れておりました。1泊2日のショートステイで持ち込んだ薬はマイスリーのみ。幸いにして夜は静かに眠っていたようで、翌日ショートステイを終えて家族の元に無事帰りました。

この本を読めば、医師でなくてもピック病の鑑別は可能なのだということを改めて確信した症例でした。「独りにされると逆上する」・・・ 寂しいからではなく、症状なのです。
ショートステイを利用するにあたり、介護計画書(ケアプラン)を作成しなければなりません。たぶん、「独りで不穏にならないように、声かけを密にする」、「レクレーションに参加して、他人とできるだけ接する」などと書かれていることでしょう。まったく無駄なことで、治療が先決であることは言うまでもありません。