2015/02/07

大脳皮質基底核変性症

大脳皮質基底核変性症・・・頻度少ないの?

「この人、どう見ても大脳皮質基底核変性症(CBD)だよね」という症例は、これまでに3症例あります。いちばん初めの症例は医師の診断によるもので、残りの2症例は私の鑑別によるものです。その2症例は共に70歳代後半の女性で、症状が進行していて寝たきりの全介助が必要な状態ですから、CBDの知識があれば鑑別は可能です。但し、生前病理診断は無理なようですし、また画像診断したわけでもないのですから、その点は気がかりなところです。

素人でも気付けるCBDの特徴は以下のとおりです。
・ゆっくりした症状の進行
・左右差のある鉛管様筋固縮
・無動、無言
・偽性球麻痺(嚥下障害、構音障害)
・尿失禁 
などがCBD診断基準に挙げられています。精神症状として、レビー小体型認知症、あるいは前頭側頭型認知症のようにも思える症状があります。

CBDの正確な発生頻度は不明ながら10万人に2人くらいらしいのですが、私はこれまでに400人(正常加齢、MCIから認知症末期の人)足らずの高齢者しかお世話していないのですが、(少なくとも)3症例に遭遇したことになります。
おそらく、実際にはもっと発生頻度は高いのではないでしょうか。ブログ「笠間の診察室から」(2015/01/27)では、病棟で担当する患者10人中の2人がCBDだというのです。

1番目の症例の人は幻覚とパーキンソニズムがあり、歩行に介助が必要でしたが、食事はなんとか自力でできていました。軽い認知症の症状(一見するとレビー小体型認知症のように思える)ではありましたが、有料老人ホームで何とか暮らせるレベルでした。

2番目の症例の人は、誤嚥性肺炎で入院して経鼻経管栄養となり、施設での看護能力の理由で退去となりました。この人は他県の病院で統合失調症と診断されていたようです。2年余りの間お世話させていただき、馴染みの関係を築き、時々冗談を言って笑わせることもできるようになったのにとても残念でした。

3番目の症例の人は、CBDであるとの診断はなくただ認知症と診断されていましたが、私がCBDと鑑別するのに長い時間はかかりませんでした。既にコウノメソッドでCBDを鑑別できるようになっていたし、2番目の症例でCBDの特徴を実際に見て把握していたのですから。

最近、いよいよ嚥下機能が悪化していたので、「Iさん(2番目の症例の人)と同じ経過を辿ることになりますよ」という主旨の警告を看護師に発していたのですが、手を打つ前に入院となりました。やはり、入院した病院で、経鼻経管栄養となるようです。そうなると、もう施設に戻ってくることはできません。
施設入所時には無言で、漫画で言う「ヌー」とした状態でしたが、やっとのことで簡単な会話ができるようになり、いくらか笑顔を見せるまでになりました。因みに、CBDとしての治療はまったく受けていません。


溺れている人を見つけた時、自分で助けるだけの能力がなければ大きな声を上げて誰か助けを呼ぶものです。助けを求めて呼んだにも拘わらず、理解されなかった理由のひとつ、
 勉強不足!
ただこのことが問題なのです。



人は往々にして自分の土俵(得意分野、知っていること)で相撲をとろうとするものです。私だって同じです。ただ、認知症とその治療という「土俵」はまだ新しくて未成熟な分野なのです。たぶん、医学部や看護学校でもまだまだ教育の整備が整っていないのでしょう。(私は行ったことがないから分からないのですが。) だからと言って、無知のまま「土俵」を築くことなく、医療の手を差し伸べられないことは避けたいものです。

やはり、医師でなくても、「認知症治療学 5巻セット」は読んでおきたい。そして、知識と共に重要なのは、
組織一丸となって認知症医療・介護に取り組むシステム化
を推し進めることなのです。