2015/01/17

認知症を学ぶ教科書

 認知症を学ぶ教科書は、これでいぃんです

ここ1年余りの間、認知症に関する専門書といえば以下の書籍を何度となくくり返し読んだ。読んでは忘れ、忘れては読み直す。そういうくり返しの中から真に理解が深まっていった。

 ・コウノメソッドでみる認知症診療、日本医事新報社、2012年10月17日
 ・コウノメソッドでみる認知症処方セレクション日本医事新報社、2013年11年22日
 ・コウノメソッドでみる認知症Q&A日本医事新報社、2014年12月5日
 ・レビー小体型認知症 [改訂版]フジメディカル出版、2014年12月5日
 ・ピック病の症状と治療フジメディカル出版、2013年5月31日

アルツハイマー型認知症だけに絞り込んだ本が1冊もないのだが、これらの教科書内に登場するから、特別に必要とは思わない。アルツハイマー型認知症(ATD)以外の認知症をしっかりとおさえておけばATDを正しく鑑別できるようになる。すると、レビー小体型認知症やピック病をATDと誤診している医師をも見抜けるようになる。
コウノメソッド実践医の岩田先生(長久手南クリニック院長)は、これらを「認知症教科書五部作」と言い表しておられるのだから、医師でない者には必要十分なのかもしれない。

これらを体系化して系統立てしてみると、概ね下表のような「認知症治療学」としての一連のテキスト(教科書)となり、認知症とその治療から介護までを詳細に学ぶことができる。
しっかりと頭の中で整理できて覚えているかどうかは別として、実際にこれらすべての教科書を何度も読んで介護現場で認知症患者(施設利用者)を観ていると、以前は混沌としてカオスに満ちていた認知症のことがすっきりと見えてきたのである。誤診も不適切な処方も同様である。
但し、100%かというと絶対にそれはない。やはり、画像で確認しなければ分からないことは分からないし、医学教育を受けた医学部出身ではない私のような者にはせいぜい85%程度を理解して鑑別するのが限度だろう。介護しながら、大脳皮質基底核変性症(CBD)や進行性核上性麻痺(PSP)に気付いたことも、正常圧水頭症にも気付いたこともあるけれど、CT画像で確認しなければならないことは分からないのである。

これらの書籍をベースに、コウノメソッド実践医の先生方の治療経験を加えて編纂した「認知症治療学」の教科書が登場すればいいし、「認知症治療ガイドライン」として提唱されれば実用的でいい。抗認知症薬の製薬会社が参画していない(スポンサーでもない)ガイドラインなのだから、おかしなバイアスがかかっていないこともいい。

さらには、コメディカル向けに分かり易くした教科書となればいい。そうすると、認知症の治療から介護までがひとつの原理原則に沿った実用的なシステムとして機能することになる。

何も勉強していなければ、「介護力」というマンパワーで何とかしようとする。実に非効率的な「労働」である。あまりに異常な頻回のトイレ訴えは、トイレに行ったことを忘れているということ以上に前頭葉の機能低下とみるべきである。その利用者をよく観察していると前頭側頭型認知症(ピック病)であることに気付く。「先ほどトイレに行ったでしょ!」と言うと、屁理屈を並べて猛烈に怒り出す。当然、FTLD検査セットは0点である。「ウィンタミンでおとなしくしてもらいたい」と思う。

認知症は医療では解決できないこととして、暴言・暴力、大声・奇声、頻回のトイレ訴え、嚥下機能の低下、意識レベルの低下などに耐えながら介護する。そして疲弊する。
こういうことに気付き、医療に連携して介護負担の軽減を図る。それが、現在求められている「介護力」なのだろうと思う。



認知症診療にも厳しい審判が必要

外科医の手術は成功して当たり前なのだろう。患者家族としては、手術して治してもらって医療の恩恵を最大限に享受する。仮にうまくいかなかったとしても、最終的に結果をすべて請け負うのは患者とその家族である。だから、厳しい目が注がれる。
腹腔鏡手術で過去5年間に84人中14人が死亡したとして厚生労働省などの立ち入り検査が実施されたという。【転記引用:朝日新聞 1月13日付
第1回群馬大医学部付属病院前橋市)の40代の男性医師が、院内の審査を経ずに腹腔(ふくくう)鏡を使った高難度の肝臓切除手術を重ね、術後100日以内に患者8人が死亡した問題で、厚生労働省前橋市は13日午前、医療法に基づき同病院に立ち入り検査に入った。厚労省と市は、病院が昨年12月に公表した中間報告書と改善報告書を踏まえ、手術の状況や安全管理体制などを調べる。その後、厚労省は、検査結果を社会保障審議会医療分科会に報告し、同病院について、高度医療を提供して診療報酬が優遇される「特定機能病院」の承認取り消しも含めて検討する。 同病院の調査によると、2010~14年に同医師が担当した腹腔鏡を使った肝臓切除手術を受けた肝臓がんなどの患者8人が、術後100日以内に敗血症などで死亡。高難度の手術に必要な院内の事前審査を受けておらず、保険適用外なのに一部は診療報酬を請求していた。同病院は、手術前後の検討が不十分なまま手術が繰り返された点など、組織的な問題があったことを記者会見で認めた。 また、この医師が執刀した肝臓の開腹手術でも過去5年間で84人中10人が死亡していた。

認知症はどうであろうか。とても甘いと思う。
認知症そのものが死亡原因として死亡診断書に記載されることはないであろうが、レビー小体型認知症にアリセプトを投与して、ご飯が食べられなくなり、経鼻経管栄養の末に早い死を遂げたケース(私の親戚)。前頭側頭型認知症を治せずに病院から出られないケース(私の親戚)。
施設のショートステイを転々として受け入れ先の決まらないピック病の人。数え上げればきりがない認知症医療難民。治療の結果責任を、医師ではなく家族介護者や施設介護者だけが暗黙のうちに引き受けるのは納得がいかない。こういうことは、認知症の「真実」にも記載されている。

高騰する医療費は深刻である。それでも、診療報酬は介護報酬に比べれば高い。治療に失敗してももらえる相対的に高い診療報酬、失敗のツケを始末する相対的に安い介護報酬。その介護報酬は引き下げられることが決まった。
いよいいよ、福祉国家日本の崩壊が進むのだろうか。