2014/12/06

認知症介護通信14/12/06

古くてもいいのです

真空管は現在のように半導体が主流になる以前に活躍したデバイスである。今では懐かし
い響きのあるレトロな言葉となってしまったが、知らない人も多いのではなかろうか。
私が子どものころには、まだ真空管がテレビやラジオで使われていたので実に馴染み深い。テレビの中を覗いてみると無数の真空管があり、ほのかなオレンジ色の光を発していた。電極を温めて電子を放出させるヒーター(フィラメント)の発する光である。

それがトランジスタ式のテレビやラジオに取って代わり、真空管式テレビやラジオは廃棄されることとなった。だから、ウチのテレビだけでなく電器屋からもらった何台ものテレビを分解して遊んだものである。分解の方が多かったが、テレビジョン技術の本を見て修理もやった。ヒーターが壊れてオレンジ色に発光しない真空管を見つけて取り替えれば、大抵の場合修理できたのである。

コウノメソッド2015年版に、「古い薬価の安い薬でも推奨する。古い薬のほうが副作用情報が完璧に揃っている。真空管でもよいから使い続けるソユーズ宇宙船と同じである」と記されていて思わず笑ってしまった。

確かに真空管が使われているのだが、民生用のガラス管式の真空管と同じ種類かと思いきや、実はメタル管なのである。ガラスではなく金属製の筐体なのである。専らメタル管は軍事用なので、一般に見ることはなく私も見たことはない(話しだけは知っていた)。ユニパルス真空管展示室 参照

ウィンタミン(クロルプロマジン)は1952年に登場した古い薬なのだから、いわば真空管のような存在である。認知症の周辺症状に効果があるということで半世紀の時を超えて注目されるが、真空管は「音が良くて、丸みや暖かみがある」として現在もなお愛され続けているのである。
どこか共通する似て非なるもの・・・、いやいや似てない。まったく違うものだ。


コウノメソッドで理解する認知症[3]

薬物を使わずに済むのであればそれに越したことはない。だれでも思うことである。しかし、認知症の激しい(あるいは迷惑な)周辺症状には薬物療法で抑えるより手はないだろう。認知症患者を介護する者が倒れてしまっては、認知症患者は暮らしていけなくなってしまう。だから、そのような事態にならないことを防ぐ。これが保護者優先主義なのである。


ただ、前々から気になっていたFDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬局)の警告が気になっていたので調べていたら、以下の記事が見つかった。2014年6月に開催された学会での発表を読売新聞が記事にしている。

認知症高齢者に、統合失調症などに用いる抗精神病薬を使う場合、飲み始めから3~6か月の間は、死亡リスクが飲まない人の2倍に高まる、との調査結果を日本老年精神医学会がまとめた。13日、都内で開かれる同学会で発表する。
抗精神病薬については、米食品医薬品局(FDA)が2005年、認知症患者に使うと死亡リスクが1・6倍高まると警告した。しかし医療現場では、激しい興奮や暴力などの症状を抑えるために用いられることが珍しくない。 
このため、同学会は12~13年、全国の約360医療機関で診療を受ける認知症高齢者(平均82歳)で、抗精神病薬を使う約5000人と使わない約5000人を登録。半年間追跡し、死亡率などを調査した。
その結果、使う群と使わない群全体の比較では、死亡リスクに差はなかった。
しかし、抗精神病薬を飲み始めたばかりの約450人を抽出すると、開始11~24週(3~6か月)の間の死亡率は3・7%で飲まない人の1・9%より高く、死亡リスクは2倍に上った。開始10週(約2か月)までは差がなかった。2014613 読売新聞より転記引用

調査・統計というのは、常に「数字のトリック」が潜んでいることがあるので、どう解釈するかはその人のインテリジェンスによるところでもある。私にはインテリジェンスがないからあまりよく分からない。だから、上の記事の数字をどう解釈したらいいのかも分からない。
ここでは登場しないが、同様の調査でアリセプトの用法用量規定と作用・副作用の関係も示して欲しいものである。

コウノメソッドでは、安全領域として副作用を最小限にする抗精神薬の種類と処方量が決められている。薬は服用せずに済むのであればそれに超したことはない。服用するにしても、できるだけ少ない種類と用量に抑えたい。だから、
 ・少量で開始し、緩やかに増量する
 ・薬剤用量は若年者より少なくする
 ・薬効を短期間で評価する
 ・服薬方法を簡易にする
 ・多剤服用を避ける
 ・服用コンプライアンス(アドヒアラアンス)を確認する

とするガイドラインに沿った薬物療法であると言える。(上記青色表記は、認知症疾患治療ガイドライン、日本神経学会編 より転記引用)


いまさら聞けないドクターコウノ。私はまだ河野先生にお会いしたことがないし、セミナーに参加して直接お話しを聴いたこともない。一般向けの書籍や医師向けの専門書を読ん
で、セミナーのビデオ(一般向けに公開されていない)をくり返し観て聴いて、コウノメソッドを軸にして認知症を学んでいるだけである。
だから、個人的にどうのということを書く資格はないし、そのつもりもない。

公になっていることから転記引用させていただく(以下、青色字は新著:「医者を選べば認知症は良くなる!」(東洋経済新報社) より転記引用)。




河野和彦(こうの かずひこ)
 医師、名古屋フォレストクリニック院長名古屋フォレストクリニック院長。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本老年医学会認定老年病専門医・代議員、日本老年精神医学会専門医、IPA(International Psychogeriatric Association)会員。
 1958年生まれ。82年、近畿大学医学部卒業、88年、名古屋大学大学院博士課程修了(医学博士)。名古屋大学医学部老年科講師、愛知厚生連海南病院老年科部長、共和病院老年科部長を経て、2009年に名古屋フォレストクリニックを開院。2011年、読売新聞「病院の実力」認知症編で「初診者数日本一」と報道された。
30年以上にわたる経験をもとに、認知症の新しい治療体系「コウノメソッド」を確立。現在では全国で200以上(増加中)の医療機関がコウノメソッドを実践し、7割以上という高い症状の改善率を誇る。

著書は『コウノメソッドでみる認知症治療』『コウノメソッドでみる認知症処方セレクション』(ともに日本医事新報社)ほか多数。
「認知症治療学」という系統立てて整理された治療論というものは存在しない。だから、研究のための研究でもなく、論文のための基礎研究や臨床研究でもなく、認知症患者とその家族を救うための認知症治療の方法論の確立が求められる。所謂、認知症治療のシステム化、あるいはパッケージ化である。

そのシステム化された認知症治療パッケージが「コウノメソッド」である。システム化は、およそ30年来の臨床経験において患者から学んだ認知症と薬物の関係が集約されている。パッケージの名称はコウノメソッドと命名されたのだが、当初は「名古屋メソッド」とも考えたようであるが地名を用いるとその地域の医療機関に迷惑が及ぶとまずいと思ったので、河野医師自らが責任を持つとの意思から自分の名前を冠したという。
自分の名を冠した治療方法を公開するのであるから、当然勇気と決断の要る行動である。功名心や自己顕示欲を満たすために軽々に命名したのではない。

【参考資料】
 ・第4回 認知症サプリメント研究会 特別講演 2011/03/19
 ・医者は認知症を「治せる」 廣済堂 2014/09/25 第1版第2刷 
 ・医者を選べば認知症は良くなる! 東洋経済新報社