2014/11/18

コウノメソッド 2015版公開される

コウノメソッドで理解する認知症[1]

コウノメソッドとは認知症を治療する対症療法のこと。河野和彦医師(医学博士、認知症専門医、名古屋フォレストクリニック院長)によって提唱された認知症の診断と治療体系で、認知症のBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)を、陽性症状、陰性症状、および中間症に分類し、それぞれに最も適した薬剤を極力少ない副作用で処方する治療プロトコルである。


コウノメソッドは、陽性症状の強い認知症でも家庭介護が続けられるように処方することを主眼として一般公開される薬物療法マニュアルに集約されている。
そのコンセプトは、 
 ①薬の副作用を出さないために介護者が薬を加減すること(家庭天秤法) 
 ②患者と介護者の一方しか救えないときは介護者を救うこと(介護者保護主義) 
 ③サプリメントの活用 
を処方哲学としている。 

コウノメソッド 認知症薬物治療マニュアル 2015年版 が発表された。歩行障害系の認知症の詳しい治療方法が加わったところが注目される。一般的に、「マニュアル」と称するドキュメントは解り辛い性質のものである。元々このマニュアルは一般向け、つまり患者向けではないのだから、認知症患者家族や施設介護者が読んでも難解であるかも知れない。
そういう方々は、一般向けに著された新書版の「医者は認知症を治せる」(廣済堂)をお読みになれば、さらに理解が深まるだろうと思う。

今回のこのブログでは初心に戻って、「コウノメソッド」という認知症治療方法を介護者の視点から書いてみる。

「認知症は治らない」ではなく、「治せない」でもなく、「治せる」のである。ただ一般にはまだまだ、認知症には非薬物療法が第一選択肢であるという認識が広く浸透しているがために、「認知症の症状はこうやって治せばいいのですよ~(コウノメソッドのこと)」と、一開業医の医師(河野医師、名古屋フォレストクリニック院長)が言ってもなかなか理解されず普及しないのが実情なのである。

認知症という、遂行機能と社会適応能力の障害は完全ではないにしろ、治せるのである。
認知症の原因であるアルツハイマー病やレビー小体病そのものを根治してしまうとは言っていない。これら認知症の原因となる脳の病気自体が治せますという治療方法は現在のところ存在しない。あくまでも、認知症の困った症状(BPSD)を診て、可能な限り少ない薬で治しましょうという対症療法なのである。

この対症療法を実現するためには一体どうすればよいのだろうか? 先に挙げたコンセプトが示している。初めて目にすると理解され難いところもあるかもしれないが、特に①と②は痛感するところである。

薬の副作用を出さないために介護者が薬を加減すること(家庭天秤法)
薬は医師から処方された通りに服用しなければならない。かと言って、5分、10分の診察で最適な処方量が決められるはずがない。だから、「10mgの薬を出しておきますから、朝昼晩に、一番効くように調整して服用させてください。減らしてもいいし、1日おきでもいいですよ。」
これが家庭天秤法なのである。施設入居者の患者が対象であれば、「施設天秤法」である。テーラーメイド処方と言ってもよい、患者個々の体質や症状に合わせた最適な薬の種類と用量を見つけ出す手法である。つまり、製薬会社が決めた通りに、5→10→15mgというように漫然と薬を出さないというのである。


認知症の患者をかかえる家族の介護負担というのは大変なものである。私の場合、家族に認知症患者は居ないから家族としての経験はない。施設で介護の仕事をしているのだが、確かに大変な仕事ではある。
患者と介護者の一方しか救えないときは介護者を救うこと(介護者保護主義)
認知症になっても穏やかに暮らしていけるのであれば、それはそれで老化だと捉えて住み慣れた家で家族の手助けを借りて生きられればそれにこしたことはない。また、デイサービスなどを利用して家庭での介護負担を軽減すればよい。

しかし、認知症の陽性症状が酷くて介護者が困り果て疲弊しては介護はできなくなってしまう。また、陰性症状が酷くて元気がなくなり、ご飯を食べることすら時間がかかるといった状態でも困る。これらは介護者を疲弊させて介護が成り立たなくなるようなことになる。即ち、
患者と介護者の一方しか救えないときは介護者を救うことを選択するという。
この選択とは、積極的意味での選択(choice)ではなく、やむを得ない二者択一(alternative)なのである。勿論、患者と家族の両者共に救えることが最良の選択であることは言うまでもない。



認知症の根治薬は現在のところ存在しない。だから、抗認知症薬(アリセプト、レミニール、メマリー、リバスタッチ/イクセロンパッチ)に加えて、従来からある抗精神病薬(グラマリール、ウィンタミン/コントミンなど)を少量だけ(副作用ができるだけ少ない用量)使うのである。更には、効果が確認されているサプリメント(健康補助食品)も併用する。
サプリメントの活用である。そのサプリメントのひとつがフェルラ酸であるが、商品名はフェルガードである。コウノメソッドでは、フェルガードを治療の要のひとつとしているのは治療効果があることがはっきりしており科学的にも証明されているからである。(参考記事はこちら→)

以上がコウノメソッドマニュアルの概要である。これらは、既に公開されている前年までのマニュアルと概ね同じである。新しい項目としては、歩行障害系の認知症の他に、認知症治療研究会のことが掲載されていることである。この研究会の趣意書をご覧になれば、コウノメソッドをベースにした治療を推し進めることが、認知症治療の現実的解決策であることが分かる。
では何故新たに学会(現在は研究会)が必要なのか、である。この答えはマニュアル全般にわたって綴られていることであるが、ひと言で端的に書き表せば、
既存の学会だけでは、今日我が国が直面している認知症の社会問題を解決する具体的かつ実践的方策を提示することが難しいからである。



マニュアルで認知症治療のすべてが語り尽くされるはずはない。本質的には患者の数だけ個々の症状があり、個々の治療がある。更に詳しくコウノメソッドについて知りたければ、少なくとも以下の3冊は読んでおきたい。(日本医事新報社刊)。








内容を見る→

【参考】
 コウノメソッド 認知症薬物治療マニュアル 2015年版