2014/11/29

認知症介護通信14/11/29

気が付けば50回を超えた ・・・ 楽しみと怒り

思いつくままにこのブログを書いているものだから、毎回のテーマが発散してしまい連続性がない。楽しみながら、時には怒りを抑えながら、このブログを書いて毎週更新している。楽しみというのは、自分の興味のあることに没頭することである。怒りというのは、「このばぁちゃん、認知症の症状が進行してきたね!」と気付いても、なかなか治療介入に踏み込めないことへの怒りである。

医者を選べば認知症は良くなる!」というのは事実だと思う。


アルツハイマー型認知症かもしれない症例
Kさん(77歳)は、交通事故による頭部外傷のため体の左半身に麻痺がある。だから、全介助であるのだが、食事だけは自力でできていた。ただ、PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy、経皮内視鏡的胃ろう造設術)があるので、一時期は経口摂取ができなかったのであろう。ここ半年ほど前から食事を拒否するようになり、昼食のみ胃瘻となった。朝と夕食は、自力摂取を勧めるが自ら摂食することは少なく介助で経口摂取している。

食事、排泄、入浴で介助が必要とはいえ、比較的手のかからない人である。声かけの反応は良く、知能はそこそこしっかりしているようであるが、ATDを思わせる「その場、取り繕い」の発言は頻繁にある。トンチンカンなことを言うものだから、職員を笑わせて皆おもしろがっている。

ところがある日、急に私に向かって「帰れ、クソじじい!」と言ったのである。私は思いもよらぬ突然の出来事にびっくりした。たまたま、面会に来ていた家族(娘)の前でそう言ったものだから、家族は私に恐縮して詫びて下さった。暴言・暴力など慣れているので、どうということもない。さて、Kさんの症状を簡潔にまとめると以下のようになる。

幻覚、妄想はない。
歯車現象はない。
いつもテレビを観て過ごし、日中の傾眠がなく視線がしっかり合う。
認知機能はいつも変わらないで一定している。
但し、年単位で見ると認知機能は緩やかに低下している。
以上のことから、レビー小体型認知症ではない

易怒性はない。
たまに暴言はあるが、目は笑っている。
常同行動はない。
びっくり眼(まなこ)ではない。
異食はない。
以上のことから、ピック病ではない

頭部外傷はATDの危険因子のひとつである。
病識がなく、明るいキャラクターである。

などと除外診断で考えると、やはり(海馬に比べて前頭葉萎縮が強い)ATDなのだろうか。
食が進まないためなのであろうが、ご飯、おかず、お茶をごちゃまぜにして遊んでいるようである。ピック病の食行動異常とは明らかに雰囲気が異なる。車椅子でなくて、自立して歩くことができて徘徊してくれればはっきりするのだろうが、歩けないから徘徊できない。

頭部CTで画像検査すれば、もっとはっきりと確信が得られるのだろうがそれができない。これが症状だけを診て鑑別する限界なのだろう。介護者としては、(最長でも)半年くらい前からの緩やかな変化を見逃さないで、「おかしいね」と感じて「○○型認知症なのでは?」と鑑別できる能力があればよいのである。

ここで注意しておきたいのは、ただ単に「おかしいね、呆けてきたね、認知症かな?」という漠然としたことから一歩踏み込んで、認知症の各タイプに特徴的な症状をしっかりと観察・把握しておくことである。そして、医師に的確に伝えることである。

「今後の介護計画、看護計画にも関わるでしょうから・・・」と前置きして、「アルツハイマー型認知症の疑いがありますよ」と報告してみたが、真剣に聞いてはくれなかった。
症状が進行する前に、早い段階で認知症の進行を遅らせる治療を始めるのが最善の選択肢であるのだが。


コウノメソッドで理解する認知症[2]
2003年、河野先生が共和病院の老年科部長時代に書かれていた「ドクター・コウノの認知症コーナー」の中に、以下のような記事がある。
日本の痴呆医療を学会や大学にまかせておけない。私たちは改革のため『日本丸』に乗ったのだと考えています。私たちが来年、臨床医のための研究会を立ち上げることがもしできたら、私は開会の挨拶でこう言いたいと思っています。
『大学とけんかをして飛び出した先生、大歓迎です。英語ができなくて論文が書けない先生、私もそうです。どうぞご参集ください。この会は、論文をたくさん書きたい先生ではなく、ひたすら患者さん家族を幸福にしたいと思っている先生だけ集まっていただきたい。米国の論文にしか価値を見出せない先生、日本の患者をもっとよく診てください。
この研究会のシンポジスト(代表討論者)は、論文数ではなく、患者数の多い先生からご発表いたます』と。日本にはきっとできる。世界一の痴呆症医療技術の国になれる、と私は信じています。
前に、「既存の学会だけでは、今日我が国が直面している認知症の社会問題を解決する具体的かつ実践的方策を提示することが難しい」と書いた(2014/11/18)。認知症の基礎研究や予防に力を入れることに異論を唱える者はいないであろう。これらの成果が1日も早く認知症患者と家族のために普及されることを願っている。

ところがである。抗認知症薬であるアリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩)が登場したのが1999年のこと、レミニール(一般名:ガランタミン)、メマリー(一般名:メマンチン塩酸塩)、リバスタッチ/イクセロンパッチ(リバスチグミン)が登場したのが2011年のことである。これらは根治薬ではなく、進行を抑える抗認知症薬なのだが、せっかく良い薬が登場したにも拘わらず作用ではなく副作用の事例が後を絶たないという現実がある。

先に引用した河野先生の記事が2003年で、アリセプトの登場が1999年であるから、既にこの時には新たに学会を立ち上げてでも手を打たなければ、真に役立つ認知症医療は実現できないと考えていたのであろう。このことは、コウノメソッド 薬物療法マニュアル2015年版 にも見ることができる。(以下、青色表示はマニュアルからの転記引用)
インターネット普及の時代、一般の人もあふれるほどの知識を持っている。ただ、その知識の使い方がずれている可能性があり、それを補正するのが医師の助言である。残念ながら、多くの場合ずれているのは医師の方であり、認知症における誤った認識は目を覆うほどである。学会や医学書は、常識的な対応を教えてくれない。それどころか積極的に医療費高騰、副作用へと誘導している感もある。 
学会は、新薬のすべてを推奨する倫理観のないキャンペーンである。学会が行われるたびに医療費は高騰する。患者が増えたからではなく学会が医療費を高騰させている。学会の理事の目的は製薬会社に恩を返すことであり、必ずしも患者優先でないことがある。  
学会は、薬価の高い薬(新薬)をなるべく多く処方させようとする教授たちから洗脳を受ける場であり、製薬会社から寄付金を受けている限り正常な話にはならない。若い医師は、統計的有意という言葉に弱い。有意にするためにデータ偽装が3割で行われていることがアンケートでわかっている。従って、論文が真実との仮定で運営されてきた学会も根底から信用性が失われている。また、学会が認定する専門医は、治すのがうまいという意味ではない。
ある学会の機関誌(月刊雑誌)が4年間分ほど手元にある。その4年間に発表された論文には認知症の総説や概説、治療方法について記されている。その中で、当然ながら「処方量を減らしただけで著効であった」という論文は存在しない。勿論、コウノメソッドに基づく臨床報告も登場しない。プラセボ群と比較して優位に効果があるという科学的根拠(エビデンス)がないということも理由にあるのだろう。そういうことで、書いても受付却下されるだけなのである。

コウノメソッドで標準的に用いられるウィンタミン/コントミン(一般名:クロルプロマジン)はどうであろうか。補完的に用いることはあっても、治療の主軸としての臨床報告も登場しない。
それは何故か。薬価が安い上に、製薬メーカーとして主力製品として拡販に努めている訳でもないこともある。抑肝散は漢方薬のひとつであるが、これはレビー小体型認知症の幻覚妄想に効果があるということで広告に掲載されている。

この学会の会員には、年数回の臨時増刊号と、年1回開催される学術集会の抄録集が無償で送られてくる。スポンサーは当然のことながら、抗認知症薬の製造販売メーカーである。こういうメーカーのご厚意に背く、即ち「少量の適量を使って著効」というような情報は掲載できないのである。理由は売上げが減るからである。

他の病気とその治療薬の関係も似たような事情(背景)を抱えているのかもしれないが、認知症の治療がうまくいかない理由は上記のような利害関係が背景にあると認識しておいた方がよいのだろう。用法用量通りの処方で治療の効果があったとすることばかりが強調されている。

ここで改めて「コウノメソッド」を今一度確認する。
河野和彦医師(医学博士)が、認知症を30年来治療してきた経験から、認知症患者の症状を診て症状と体質に合わせて薬をmg単位できめ細かくテーラーメイド処方する方法(method)を定めた認知症治療体系のこと。その処方においては、「介護者保護主義」、「家庭天秤法」、および「サプリメントの活用」を3本柱とする治療哲学で貫かれている。

家庭天秤法とは、薬の副作用を出さないために介護者が薬を加減すること。介護者保護主義とは、患者と介護者の一方しか救えないときは介護者を救うこと。更に、認知症治療において有用である健康補助食品(サプリメント)も活用する。