2014/11/08

レビー小体型認知症

やっと鑑別できたレビー小体型認知症

最近、Oさん(80歳)は食事を拒否することが多くなってきた。何を食べても美味しくないと言い、食事を拒否するのである。1年前は見守り程度で自力での食事摂取ができていたのだが、最近は食欲不振もあって介助なしでは食事摂取ができない状態である。

「最近、我が儘になった」とか「食事の拒否が目立ち、摂取量が減った」ということで、職員の間ではOさんを心配している。以下が誰の目にも分かるOさんの様子である。
 ・理由がないのに、急に不機嫌になる。
 ・食事を拒否するが、介助すれば半分程度は食べる。
 ・食事中にむせることがよくある。
 ・特定の職員(私のこと)の名を叫んで呼ぶ。日によっては断続的に終日叫んでいる。
 ・被害妄想がある。特に被注視妄想(前に座っている人がジロジロと見ている)があり怒り出す。
 ・体幹が横にいつも傾いている。

私は認知症を疑っているのだが、いまひとつ確証を掴めずにいた。それで、両腕の肘を持ち上げて「鉛管様筋固宿」と「歯車現象」の確認をしてみた。すると、両腕に僅かではあるが、「歯車現象」を確認することができた。別の日にも再度確認してみたのだが、やはり「歯車現象」がある。
更に、レビースコアを基にしてOさんがDLBではなかろうかと鑑別してみると、やはりDLBであると推定されるのである。

DLBは診断が難しく、アルツハイマー型認知症(ATD)と誤診されることがあると指摘されている。確かにその通りで、施設入所者の中にはDLBであるにも関わらず、ATDと診断されている人がいる(中には認知症の診断さえない人もいる)。

Oさんの場合、80%程度の確率でDLBとみて良いと思う。100%の自信がもてないのは頭部CT画像で脳梗塞の有無を確認できないからである。念のため、既往歴を見てみたら糖尿病の記載はあるが、脳梗塞の記載はない。糖尿病の高齢は脳梗塞の危険因子であるから、当然疑っているのである。

レビー小体型認知症の診断基準は以下の通りである。この基準を基にすると、OさんがDLBであるかどうかはなかなか分からない。


以上見てきたように、初期段階のDLBであり、懇切丁寧で説得力のある詳細な情報を問診時に医師に伝えない限り正確な診断は得られないだろうと思う。私なら迷わず、レビースコアを持って市内唯一のK医院(コウノメソッド実践医)に連れて行くのは言うまでもない。

現実的かつ切実な問題として、認知症の「に」の字も口にしたことのない看護師にどのように報告・説得して、家族の承諾を得て受診させるかということである。うぅ~ん、これが悩ましい!

更に、Oさんから聞き取りと観察を続けてみた。すると、下記のことが分かった。
 ・記憶力には変動があり、2時間前に食べた昼食のことを忘れていて、「食べていない」という。
 ・前日に交わした会話のことをしっかりと覚えていることもある。
 ・幻覚の有無を何度も確認して訊いてみるが、「ない」と明言する。(事実、ないと思える。)
 ・ぼんやりしていることが多い。但し、意識障害のレベルではない。
 ・食事の際、食塊を飲み込みにくいという。
 ・歯車現象に再現性があり、いつもその現象を生じている。
 ・その場取り繕いの言動はなく、ATDらしさを微塵も感じることがない。
 ・急に怒り出すことがあるが、ピック病らしさを感じることがない。

たぶん、こういうことをきちんと医師に正確に伝えない限り、OさんをDLBだと診断できないであろうと思う。初診20~30分程度の枠内で、認知機能の変動あり、DLBの顕著な症状(幻覚、妄想)のないOさんをDLBと診断できる医師は少ないのではなかろうか。DLBは誤診されているケースが多数あると指摘されている理由をOさんは教えてくれているように思えてならない。いつも近くにいてお世話しつつ、「ちょっとおかしいね・・・」と気にしながらも、DLBだと鑑別するのに半年近くかかっているのである。


認知症の国際会議始まる 東京(11月5日)

認知症に関する国際会議が始まった。あまり期待はしていなかったが、「やっぱりね・・・・」という印象である。どこがかというと、「最新の予防研究の報告」、「効果的なケアの普及」というところである。現時点で、今必要とされる実現可能な効果的治療法というポイントが欠落しているのである。
高齢化に伴い患者が急増している認知症について、「ケアと予防」をテーマに先進各国の政策担当者などが意見を交わす国際会議が、5日から東京で始まりました。
 <中略>
会議は3日間の日程で開かれ、最新の予防研究が報告されるほか、効果的なケアの普及に向けた国際社会の連携などについて意見が交わされることになっています。

(上記青色箇所は、NHK NEWS WEBより転記引用)
いつまでこんなことやってるの? と、思ってしまう。


安倍晋三首相は六日、東京都内で開催中の認知症に関する国際会議に出席し、現在の認知症対策を拡充し、新たな「国家戦略」を策定する方針を表明した。「わが国の認知症施策を加速させ、厚生労働省だけでなく政府一丸となって、(認知症の人の)生活全体を支える」と述べた。
厚労省が昨年四月から進めている「認知症施策推進五カ年計画」(オレンジプラン)を見直すほか、省庁横断的な取り組みも進める。年末の政府予算案の編成に反映させるため、年内に策定し、来年度から実施する方針。
認知症になっても住み慣れた地域で暮らせるようにするのが狙いだが、財源確保や、当事者の視点をどう盛り込めるかが課題となりそうだ。
安倍首相は「認知症の人が安心して暮らせる社会をつくることは、世界共通の課題だ。最速で高齢化が進むわが国こそ、社会を挙げた取り組みのモデルを示さなければならない」と述べた。
新たな戦略では、市民による「認知症サポーター」の養成目標を現行の六百万人からさらに引き上げるほか、医療・介護の専門職による「初期集中支援チーム」を全市町村に配置することなどを盛り込む方向だ。同チームは現在のプランでは「全国普及を検討」との表現にとどまっている認知症の発症リスクや容体の変化を探るため、一万人を対象にした追跡調査も実施する。
国際会議は昨年十二月に英国で開かれた「主要国(G8)認知症サミット」の後継イベントで、五~六日に開催。世界保健機関(WHO)や各国政府の当局者に加え、認知症の当事者ら約三百人が出席し、症状の各段階に応じた支援や、科学的な予防と治療などについて、国際協力や共同研究を進められるよう意見交換した
検討結果は来年三月にWHOが開く各国保健相会合での議論に反映させ、世界全体で認知症を共通の重要課題として取り組むよう呼び掛ける見通し。
 認知症対策で新戦略 首相表明、年内策定へ (上記青色箇所は、東京新聞より転記引用)

どこかしら、虚しい言葉の羅列であり、政治家のパフォーマンスにしか思えない。認知症患者の増加は、国家存亡の危機と思うのは考え過ぎであろうか。医療費増大、介護費と負担の増大、国力を落とすに違いないのだが。