2014/10/25

認知症介護通信14/10/25

富士フイルム・・・ カメラメーカーでもあるけれど

今でこそ一般にはデジタルカメラメーカーの印象が強い富士フィルムであるが、社名のとおりフィルムメーカーでもある。
私は同社のリバーサルフィルムである「ベルビア50」を愛用していた。デジタル全盛のカメラ市場ではあるが、現在もなお写真フィルムも製造販売している。デジタルカメラの普及によりフィルムの需要が激減した現在、経営的には撤退した方が良いのかもしれないが、写真愛好家のためにフィルムの製造販売を継続するのだから立派である。

ところで、近年の富士フイルムは化粧品や医薬品の開発、製造販売にも注力しており、テレビCMでもよく見かけるようになってきた。その富士フイルムが富山化学工業と共同で認知症治療薬を開発しているというから注目したい。この開発には京都大学iPS細胞研究所も参画している。

   アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」日本にて第II相臨床試験を開始
   米国の第II相臨床試験でアルツハイマー型認知症研究機関と共同で試験を開始
認知症の患者は、現在世界中に4,400万人いると推定されており、平成42年には7,600万人に増えると予測されています。その内、アルツハイマー型認知症の患者が半分以上を占めており、今後もその傾向は続くと見込まれています。現在、アルツハイマー型認知症の治療薬として、ドネペジル塩酸塩を始めとするアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などが上市されています。しかし、これらの治療薬は、神経伝達能の増強などによる一時的な症状改善にとどまるため、新たなアルツハイマー型認知症治療薬の登場が待たれています。「T-817MA」は、富山化学工業が見出したアルツハイマー型認知症治療薬で、強力な神経細胞保護効果、神経突起伸展促進効果を有し、病態動物モデルにおいて高い治療効果を示すことが確認されています。日本では、富山化学工業が平成24年より第 I 相臨床試験を実施。同試験にて「T-817MA」の安全性および忍容性を確認したため、ドネペジル塩酸塩で治療中のアルツハイマー型認知症患者を対象とした「T-817MA」の有効性および用量反応性を検討する第II相臨床試験を5月末より開始しました。また米国においては、昨年、富士フイルムがアルツハイマー型認知症領域で豊富な臨床試験の経験を有するADCSと共同で第II相臨床試験を実施することを決定。本年6月より、日本の試験と同じ用法・用量の第II相臨床試験をスタートさせました。今後、日・米における同用法・同用量での臨床試験体制の下、「T-817MA」の開発を進めていきます。「T-817MA」は、高齢化社会の進展に伴って急速に増加しているアルツハイマー型認知症患者に対して、高い治療効果が見込める革新的な薬として期待されています。今後、富士フイルムグループは、京都大学iPS細胞研究所と実施している、患者由来iPS細胞を用いて「T-817MA」の有効性を予測するバイオマーカーの特定などを目指す共同研究も活用して、「T-817MA」の開発をさらに加速させていきます。



現在、認知症の中核症状をターゲットとする治療薬は下記の通りである。介護に携わる者の殆どは薬のことに関心を持っていないと思われるが、これらの名前くらいは知っておきたい。何故なら、これらの薬が、適切ではないか、場合によっては副作用により介護負担を不当に増していることがあるからである。
 ・アリセプト、ドネペジル(ジェネリック品)
 ・レミニール
 ・メマリー
 ・リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ (貼り薬)

ピック病の人にアリセプトを投与して在宅生活が困難となり、ショートステイでの生活を続けているケース。アルツハイマー型認知症の人にアリセプトを過剰に投与して元気が出すぎ、見守りが常時必要となってしまったケース。こういったケースは認知症の症状と服用している薬の因果関係をしっかりと見ていれば見抜けることである。

下図はコウノメソッド2014年版に掲載されているアルツハイマー型認知症の誤診と副作用の関係である。例えば、[アリセプト副作用]→[Yes]→[逆上]のケースは先に挙げた在宅生活が困難となった「誤診コース」である。
この人の場合、アリセプトが効かないのだから投与を中止しなければならないのであるが、そのことに医師は気付いていない。更には、アルツハイマー型認知症ではなく、ピック病であることに気付いていないことも問題である。

アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の登場に期待したいところではあるが、それ以前のこととして、先ずは認知症を正しく診断できる医師がどの医療機関にも居ることに期待したい。

アリセプト(ドネペジル)、レミニール、メマリー、リバスタッチパッチ、イクセロンパッチには、規定された用量まで増量しなければならないという決まりがある。そのため、本来は有効な良い薬なのであろうが、患者本人のみならず介護者にとっても好ましくない周辺症状を増悪させている。

認知症治療薬「T-817MA」には増量規定のない、「効果が現れた用量で維持する」という普通の規定の優れた治療効果を有する薬であって欲しいと期待している。私は、写真愛好家のためにフィルムの製造販売を継続する富士フイルムのファンである。だから、利益至上主義ではなく、良心的な医薬品の製造販売ができる会社であって欲しい。

レビー小体型認知症の意識消失発作

レビー小体型認知症(DLB)は、活気がなくて、いつも眠っているのだか覚醒しているのだか分からないような状態でいることが多い。症状の中期から末期だからか、年齢からみて老衰だからなのかよく分からない。こうなると、通常は介護上の手がかからないから、ほとんど注意の目が届かない。
それでも、職員がヒヤリとして心配になる時がある。以下の引用で示すような、DLBの意識消失発作が発生した時である。
(ドクターコウノの認知症ブログ レビー小体型認知症の勉強  DLBの意識消失発作 より転記引用)
DLBは、ある時期頻回に意識消失をおこすことがあります。食事のあとにTVを30分以上座位で観ているときにおこすことが多いです。首を後ろにうなだれ体をゆすっても起きません。必ずしも血圧が低下しているわけではなく、デイサービススタッフはあわてて救急車を呼びます。搬送先の病院では、頭部MRI、脳波、24時間心電図を行いますが何も異常は見つかりません。循環器内科医は、DLBが意識消失発作をおこすことを知らないことが多いので一通りの検査をします。初回はこのようなことがあっても仕方がないですが、DLBとわかっていて何度も救急車を呼ぶことは不要です。呼吸をしていて、脈があれば静かにしておけば5-30分で目を覚ますことが多いですが、かなり長い間目を覚まさない場合もあります。
Eさんは軽微な血管性認知症(VaD)とDLBの混合型である。食事はかろうじて自力摂取できるレベルではあるが、ほぼ全介助の状態である。食事中や食後に意識消失発作を起こして職員を慌てさせることがある。そういう場合は手順通りにバイタルチェックをするのだが、正常である。
Eさんの意識消失発作には次第に慣れてきた。私も慣れてきたのだが、これをDLBの症状としての意識消失発作であると思っている職員は看護師も含めていないであろう。始末に悪いのは、Eさんをアルツハイマー型認知症(ATD)と誤診している開業医である。

NさんもDLBである。寝たきりであり、眠っているのだか、意識消失の状態にあるのだかよく分からない時もある。食事と入浴の時に離床するが、当然車椅子を利用する。転倒のリスクがないことだけが救いである。ただ、食事にはやたらと時間がかかるのである。口を開けない、咀嚼しない、嚥下しないのであるからだ。
食べないのに無理矢理に口に食べ物を入れるのは危険であるし、虐待に近い行為でもある。そこで私は、ジャパンコマスケールを利用して意識レベルを確認して、グレードⅢであれば食事介助を行わないことにした。
ジャパンコマスケール
Nさんは寝たきりであるからとても静かである。Nさんは目を閉じ何も言わないのだが、週に1度は息子さんかそのお嫁さんのどちらかが、あるいは夫婦揃って面会に来てくださる。せめて、ニコリン点滴で意識レベルを引き上げたいのだが、実現されることはない。

もし、Nさんが私の親であれば、ニコリン点滴+アリセプト1.67mg(家庭天秤法で調整)+フェルガード100Mという選択肢を選ぶ。死亡診断書に「認知症」が死亡理由というのはないであろうが、認知症のままでの天寿まっとうという選択肢はないだろう。