2014/09/27

認知症介護通信14/09/27

嗜銀顆粒性認知症(AGD)

Iさん(女性、94歳)とは5~6年前のデイサービス時代からの既知の関係である。そのIさんが私の勤務する施設に入所することになり、現在は落ち着いてほとんど手のかからない生活をしている。在宅であった当時は同じことをひとつの会話の中でくり返し訊くし、毎日のように同じことを訊くものだから、MCI(軽度認知機能障害)くらいに思っていた。それでもアルツハイマー型認知症(ATD)のニュアンスはあまり感じることのない、ADLもしっかりしている、在宅で問題なく暮らせるレベルであった。

ところが、私は入所前の経緯を、「情報提供シート」で見て不審に思っていた。ある病院で入院中に前医がアリセプトを処方して、介護拒否、暴言、暴力に到り身体拘束を受けていたのである(現在はアリセプトを服用していない)。
いざ入所してからの生活状況を観ると、概ね普通に生活しているのである。それでも「正常加齢範囲」としてしまうには腑に落ちないこともある。
 ・辺り構わず、唾を吐く。それを注意すると、別人のように怒り言い訳する。
 ・気に入らないおかずを床に捨てる。それを注意すると、別人のように怒り言い訳する。
 ・時々、目に付いた職員をわざわざ呼び止めて同じことを質問する。
 ・レクレーションなどの時、周囲の雰囲気に迎合することなく「我関せず」の無関心でいる。

以上のことからピック病を疑ってきたが、年齢(94歳)を考慮するとどうも合点がいかない。
前々から気になっていた認知症のことが、河野先生のブログに書かれていたので紹介したい(以下転記)。
嗜銀顆粒というのは、Gallyas-Braak染色でコンマ型あるいは紡錘状に描出される構造物で、この嗜銀顆粒だけが観察される認知症をAGDと定義されました。つまり老人斑などのアルツハイマー病変が同居する場合はAGDと診断しない約束になっています。Braakによると、AGDは高齢者脳ではアルツハイマー型認知症に次ぐ頻度だと言われます。Saitoらによれば高齢者連続剖検例における頻度は、ほかの病理と合併している例を合わせると16%に及ぶのですが、これは前述したようにAGDと言ってはならない個体を含めています。この高頻度をみると、やはり90歳以上の病理組織は重複が多く混とんとしていることがうかがえます。
症状は、記憶障害が軽度で進行が緩徐である一方で、情緒面の症状(焦燥、不機嫌、易怒性、易刺激性)が出現しやすいですし、画像的にも萎縮の左右差(脳血流・代謝でも左右差あり)が見られやすい(嶋田)と言う点でもピック病に似ています。進行が緩徐である理由はやはり脳萎縮が高度化しない、側頭葉内側前方の限局的萎縮にとどまるからでしょう。まとめると90歳近い高齢で脳萎縮が軽いのにピック病のような患者と言うことになります。治療はピックセット(ウインタミン+フェルガード100M)でよいと思います。
AGDについては、鹿児島認知症ブログでも詳しく書かれているので参照されたい。
どうも、IさんはAGDであろうと思えて仕方がないのであるが、確認のしようがない。 認知症と言うと、とかく問題行動、厄介な周辺症状ばかりに目が行くのだが、上述のような、呆けてはいてもおとなしくて手のかからないタイプの認知症もあるのだということを知っていただきたく掲載した。

樹齢数百年の桜の古木や樹齢数千年の杉の古木が畏敬の念をもって崇められるように、ほとんど手もかからず自立していて、齢90歳を超えてなお生き続ける超高齢者には、特に敬う心や畏敬の念をもって接していきたいものである。もしかしたら、「長寿大国 日本」を象徴する存在なのかもしれない。