2014/07/30

認知症になったら真っ先に読む本[2]

もう一度、岩田先生の「認知症になったら真っ先に読む本」を読み返してみた。純然たる認知症医療の問題点(誤診と不適切な処方薬)は既に分かっていたから、今回はもっと包括的な視点で見た。
ひとつのキーワードは、多職種連携である。医師がちゃんと認知症を診ておらず、従って家庭介護あるいは施設介護の現場が多大な迷惑を被っていることは、ここで改めて述べるまでもない。 

医師が認知症を治せない主な理由は、ひとえに勉強不足である。自分が得意とする主たる診療(看板で標榜する診療科目)の傍ら、「ついで」に認知症を診ているのであろう。つい先日、市立病院で「アルツハイマー型認知症」と診断されアリセプト5mgを処方されているショートステイ利用者を立て続けに2症例見た。1例は紛れもなくピック病で、もう1例はピックぽいところもあるが鑑別に迷うところもある。後者の場合、診断に囚われず「対症療法」で、アリセプトを半減するか、グラマリ-ルを追加して様子を観れば良く、コウノメソッドの「家庭天秤法」を採用すれば良いのである。いかんせん、私にはどうすることもできないから、同居の家族の介護にかかる心労を思うとやりきれない。 

こういうケースばかり見ているストレスというのも何だか悲しい。そもそも、何も知らないで、「これが介護だ」と暗黙のウチに体制に従っておれば気軽だったかも知れない。そういう訳にも行かないから、できる範囲で現実を直視して自分にやれることを地道にやって行きたい。

医療単独の問題点はさておき、この本で述べられている多職種連携に焦点を当ててみたい。
認知症学会とか医師会といった「権威」あるところに頼っていたら、いま現実的に人々が抱えている認知症の問題は何百年たっても解決しません。患者さんやその家族も含めた医療・介護の草の根でしっかりしたネットワークをつくり、それを利用する仕組みをつくってしまうことが、早道ではないかと考えています。(p.196より転記)
この本は、2012年11月に初版が発売されたが、当時も現在も何も変わっていない。このことは、岩田先生がご活躍される地域に限ったことではなく、遠く離れた地方に住む私の地域でも同様のことが言える。上に挙げた事例で、もしも多職種連携が図れているならば、ショートステイ利用者は介護上の問題が少なくてショートステイを利用せずに自宅に居るかもしれないし、利用中に介護上の問題を露呈することなく普通に滞在しているだろう。

・薬物療法の開始後、家族が異変に気付いて主治医に相談する。
・ケアマネが異変に気付いて、家族を通じて主治医に相談する。
というような方策を講じていないとすれば、そこに「情報武装」の欠如が存在することになる。家族にその情報武装を求めるのが酷な状況であれば、ケアマネがしっかりサポートしなければいけないのである。せめて、「処方薬に疑義有り」くらいのことは遠慮無く言ってもいいと思うのである。
 


発行元の現代書林のホームページに「立ち読み」としてPDFファイルが公開されているのでご覧頂きたい。この本は、日本脳神経外科学会 第72回学術総会モーニングセミナー「認知症は治せる」の座長を務められた堀先生(認知症治療研究会 代表世話人)が、「非常にアトラクティブな本」と評されていたので興味を持ち購入した。私は目から鱗であった。 

もし、この本を出版直後、真っ先に読んでいたら現在直面している私の課題解決がいくらか早まっていたかもしれない。ある意味、「認知症になったら真っ先に読む本」は戦略本であり、「ドクターイワタの認知症ブログ」は戦術と言えるのではなかろうか。言うまでもなく、戦略あっての戦術であり、戦略なしの戦術のみというのはあり得ないのである。

従って、この本を数回くり返し読んで、ブログに公開された症例報告を丹念に見ていくうちに自然と認知症の理解が深まってくる。因みに、「第3章 症状も治療方法もまったく異なる、認知症の病型を知る」で、①ピック病(前頭側頭型認知症)、②レビー小体型認知症、③アルツハイマー型認知症、④脳血管性認知症 という順番で記載されているのだが、一般に言われる認知症のタイプ別頻度順ではない。「介護負担順」であるし、「社会問題順」でもあるし、「横行する誤った認知症医療順」であるとも言える構成のように思うのは私の深読みであろうか。