2014/06/04

懐メロを聴いて

音楽療法が認知症に有効であるという明確な根拠は見当たらないようである。 そもそも、音楽療法が認知症に与える効果を科学的に証明しようとすること自体が無理なことなのかもしれない。
科学的にどうのこうのということよりも、認知症高齢者がその日その日を無事に、そして楽しく過ごしてくれればそれで良いのである。

ここで紹介する「紀元二千六百年」は、1940年(昭和15年)に皇紀2600年を祝って作られた行進曲風の唱歌。 ラジオ放送によって広く流行した。(ウィキペディアより転記)


ある日のこと、少しばかりざわついていたデイルームで、たまたまこの楽曲が流れた。 すると、それまでざわついていた空気が一気に変わりしんと静まり返ったのだ。
「あっ、これだ!」と私は思った。 高齢者に馴染みのある懐メロを聴かせると喜ばれることは知っていたが、果たして最もふさわしい楽曲がどれかまでは分からずに試行錯誤していたのだ。

ところで、懐メロに最も反応が良いのは、第一期(軽度)~第二期(中程度)のアルツハイマー型認知症の人である。 ニコニコしながら手拍子を打ったり、首を振ってリズムに乗ってくれる。 中には、いつもは周囲にまったく無関心である人も、懐メロには反応する人もいる。
だから、もし音楽を聴かせるレクレーションの時間があれば、アルツハイマー型認知症の人をキーパーソンにその場を盛り上げるように誘導ればよい。

では、軍歌はどうか。 これは、意見が分かれるところである。 個人的・主観的なこともあろうが、私は構わないのではないかと思っている。 戦争を賛成する気持ちなどまったく持ち合わせていないが、かつて我が国は戦争を経験している。 
その当時のことを、唄を聴くことを契機に思い出すのも悪いことではないと思う。 ただ、軍歌を聴いて、当時の辛いことを思い出し、涙する人が一人でも居れば止めればいいだけのことである。

中には怒った人もいた。 「軍歌をかけるとは何事だ!」と蕩々とお説教されたが、その人は現役時代に教師をされていた。 それも、社会の教師である。 普段から認知症とは思っていなかったが、改めて認知症ではないと実感させられた。

果たして、どういう楽曲が好まれるのか? まず、「青い山脈」(藤山一郎)、「リンゴの唄」(藤山一郎・並木路子)などがすぐに思いつく。 戦前、戦中、戦後は、年間に発表される楽曲は現在のように多くはなく、従ってヒット曲といっても限られてくる。 インターネットで、「流行歌」、「ラジオ歌謡」などの言葉をキーワードに検索してみるのもいい。
また、NHK紅白歌合戦は昭和26年から放送されている「国民的一大行事」であるから、これに登場した歌手の持ち歌を調べて聴かせるのもいい。