2014/06/02

医師任せでは認知症は治せない

認知症治療に関する1冊の実用書を紹介したい。「コウノメソッドでみる認知症処方セレクション」である。


この本は、日本医事新報社から発刊された河野和彦先生(名古屋フォレストクリニック院長)が著した「コウノメソッドでみる認知症診療」の続編だ。 前著を総論とすれば、「コウノメソッドでみる認知症処方セレクション」は各論とも言える。
私は医師ではなく介護福祉士なので診断も処方もできないが、医療-看護-介護の範疇を超えた視点で認知症を理解するために河野先生の著書をいくつも読んでいる。 ひとつの大きな理由に、実際的・実践的な事例として症状、処方、作用/副作用が示されていることにある。

国際老年精神医学会、他の諸学会では、認知症のBPSDへの第一選択肢は非薬物療法で、第二選択肢は薬物療法とされるが、現実はそんなに甘くはない。 介護現場に居ると薬物療法の不適切さが目に付く。 勿論、非薬物療法さえも十分とはいえない。食事、排泄、入浴などのお世話だけで手一杯というのが認知症の人を取り巻く厳しい介護の現実だ。

そういう厳しい現実に加え、的確な診断と適切な処方がなされていない故に生じる認知症のBPSDがもたらす、更なる負担とストレスにはもううんざりしている。
■前頭側頭型認知症にアリセプト(一般名:ドネペジル)投与で、終日唸り声をあげる在宅の人
■ピック病(前頭側頭型認知症)を診きれず、在宅の家族が苦労している人
■レビー小体型認知症の幻覚・妄想を治してもらえない在宅の人
■アルツハイマー型認知症の易怒性、徘徊などのBPSDに辛い思いをしている家族
こういう事例を挙げると際限なく書き連ねることになる。

さて、私は学会誌を4年間ほど購読し、介護現場で見る症例と照らし合わせる作業を続けてきたが、河野先生の著作に出逢ってからは格段に認知症に関する理解が深くなったと思う。 逆に言うと、いくら学会誌・専門誌を読んでも臨床現場で治療に役立つ実践的知識はあまり得られないということである。 但し、原因究明、予防などの基礎研究は重要であり、それを否定しているのではない。
 

何故こういうことが言えるかというと、ピュアなレビー小体型認知症すら治せずにいるケース、前頭側頭型認知症(ピック病)をアルツハイマー型認知症と誤診してアリセプトを処方しているケースなどを多数目の当たりに見ているからである。
これは、特定地域に限定したケースかというと、そうではなく全国各地で「認知症医療過誤」の事例は発生している。

認知症の原因である各種疾患の根本的治療は現在のところあまり望めないものの、「認知症は治る」というコモンセンスを医療関係の方々のみならず、認知症の人の家族も持って欲しい。
医療関係者のみならず、介護支援専門員、(特に)施設介護に携わる方々にもこういう実用書で勉強して、納得のいかない不適切な診断や処方には毅然とした態度で、不適切な診療を指摘して医師がまともな治療をするよう要請しなければならない。

医師が認知症を勉強して治療をするのは当然のこととして(実際はあまり勉強していないことが多い)、医師以外で認知症の人の看護や介護に携わる人もしっかりと勉強してほしい。  医師任せでは認知症は治せないのである。 医療・看護・介護など学際的、かつ統合的なシステム連携が必要なのである。