2014/06/09

どうやって認知症を勉強したらいいのか[3]

たぶん、英語であろうと物理であろうとどんな科目であろうと、費やした時間に対して直線的に成績が上がっていくことはないだろうと思う。
あくまでも経験であるが、何かの勉強をしていて、いくら時間を費やしても実感できる成績の伸びを感じない時がある。 
しかし、あきらめずにずっと続けていると、ある時ドンと伸びを実感できる時が来るのである。 そして更に時間をかけて勉強を続けていても、また伸びを感じない日々が続くのである。 「継続は力なり」である、やがてまたドンと伸びを感じる時がやって来る。
そのドンとやって来る「伸びの時」に出逢う前にあきらめてしまうから、月並みのところで止まってしまうのである。



さて、「どうやって認知症を勉強したらいいのか」という主題に移ろう。
4大認知症のうち、アルツハイマー型認知症(ATD)が60%程度とされているのだから、ATDから始めようというのもありかもしれない。
しかし、ATDは「除外診断」である。 レビーっぽくなくて、ピックっぽくもなくて、血管性っぽくもなくて、・・・・・と、やっていって最後にATDと決まる。 「・・・・」のところには、例えば、正常圧水頭症など認知症を生じさせる各種の原因疾患がはいる。

敢えて、順位付け、あるいは重み付けをするとすれば、レビー小体型認知症(DLB)とピック病(前頭側頭型認知症、FTD)を挙げておきたい。 もっとも実際は、認知症のタイプ別に優先順位を付けてというのは実用的ではないから、同時並行となるのだけれど。

ピュアなDLBであればさほど問題ではないかもしれないが、DLBがピック化したLPC(Lewy-Pick Complex)、それと、ピック病(FTD)が優先的に学習されるべきではないかと私は思っている。
何故ならば、前者のLPCは介護現場、あるいは患者家族が適切な知識をもって余程注意深く観察しておかねば、タイムリーな治療介入が得られないまま周囲が疲弊してしまうことになる。

後者はまだまだ認知度が低くて、ATDと誤診されることがある。 ATDと誤診されるのだから、お決まりの処方でアリセプトとなる。 そして、悲劇が始まるのである(このことについては、また別の機会に書こうと思う)。

 そういうことで、「ピック病の症状と治療」(著者:河野和彦先生)を紹介しておきたい。
この本を読むと、FTLDだけでなく、不思議なことにATDが見えてくる(ような気がする)。
前頭側頭型認知症に関する専門書は、日本国内に2冊しかなかったのだが、これも治療の発展を遅らせてきた一因かもしれない。
しかし、この「ピック病の症状と治療」を読めばピック病(前頭側頭型認知症)が解る。

因みに、ある必要性に迫られて、FTD、Pickなどを検索のキーワードに米国や英国の専門サイトを随分と調べたことがあるが、「治療方法なし」が大半で、「少量のアリセプトを処方する」などという記述しか見つけだせなかった。



私は前に、「序文から読みなさい。 序文には重要なことが書かれている」という主旨のことを書いたが、まさにその通りなので、出版元のホームページから転記させて頂く。


<はじめにより>
 アーノルド・ピックが最初のピック病症例を発表してから2012年で120年が経過したことになります。 ピック病を独立疾患として最初に認めた論文が日本人医師大成潔によるものだったこともあり、とくに日本ではピック病の名称が認められてきました。
ところが、「ピック病」は1996年以降マンチェスターグループによる前頭側頭葉変性症(FTLD)分類の下位に組み入れられ、その名称も消えようとしているのが世界の趨勢です。

驚くべきことに現在、インターネットで検索するとピック病という病名のついた書籍は2冊しかありません。 松下正明先生・田邉敬貴先生の対談集(2008)と万引きで一時は懲戒免職になった茅ヶ崎市職員中村成信(しげのぶ)さんの書籍(2011)です。

勤務医時代、大学からアルバイトに来ていた若い精神科医が統合失調症の遺伝子異常を研究しており「僕は教授になる」と公言していました。 彼にピック病の研究もしてくれないかと頼んでみたら「ピック病は数が少ないから論文を書いても引用数が伸びず教授にはなれないから」と言われ衝撃を受けました。
このような打算的な人たちが学会を構成している限り、患者数の少ない疾患はいっこうに診療技術が上がらないだろうと思います。 失語症候群を含めたFTLDには診断の難しい患者もいますが、多くは知識さえあれば簡単に見つけ出せ、簡単に病状を改善できます。 そのことを1日も早く世に伝えようとこの本を執筆することにしました。

私は画像診断学隆盛の現代において、臨床診断を重視しておられた田邉先生を尊敬しており、プライマリケア医に認知症の診断治療を期待しているコウノメソッド(著者の考案した処方マニュアル)の診断編においては、「臨床の鬼」としての田邉先生の魂を引き継いでいきたいという思いでいっぱいです。
松下先生も20年前に「天秤法」というアルツハイマー型認知症と多発梗塞性認知症の鑑別方法を考案された方で、長年私の目標としてきた方です。そのお二人が「ピック病」の名称を絶対に残したいという思いでおられることを知り、私はこの書籍の題名に「ピック病」を冠する責務を感じました。

また、題名を「診断と治療」にせず「症状と治療」にしたことにもわけがあります。 ピック病というと、なにやら得体の知れない診たこともない稀な病気と思われるでしょうが、各地の認知症外来ではおおかた15%であると報告されており、多くの臨床医がピック病を診たことがないのではなく、見過ごしているだけと思われます。 
ピック病と気づかないとアリセプト5mgで周辺症状が悪化する(激越性、常同行動)から問題なのです。

けれども、認知症診療経験が浅くCTという武器も持たない開業医に、ピック病をきっちり診断してくださいとプレッシャーを与える気は毛頭なく、「こんな感じの症状ですよ」と提示するにとどめようとしたのが「症状」という題名に込めた思いです。


他に、順不同で読んでおきたい本を以下に掲げておきたい。 何処に何が書かれているくらいのことしか覚えていないが、必要に応じて本棚から取り出して参照している。

<序文より>
この本は,急増する認知症の診療にプライマリケア医が積極的に参画できるようになるため,参考にしていただくことを目的としています。 プライマリケア医が認知症診療にかかわるべき理由としては,以下のようなことが挙げられます。

認知症の患者が急増して「専門医」だけでは対処しきれなくなっている現状がある。 病院の「専門外来」はパンク状態で,初診予約から初診まで3カ月もかかっている。

・神経内科や精神科では「効かなければ増薬」という処方が繰り返されることがあり,副作用の低減や介護のしやすさを目指していないため,介護者を苦しめている実態がありながら, それがなかなか改善されない。

・いわゆる「専門医」の中には,多忙のため介護保険の主治医意見書を書かなかったり,患者の介護について時間を割いて介護者と話さなかったりする者も少なからずいる。
とはいえ,多忙で画像診断機器を持たないプライマリケア医が,短時間で知能検査を行ない,CT所見も見ずに認知症を診断したうえで処方することなどできるのでしょうか。
ご安心ください。 できます。

過去に筆者が執筆してきた書籍は,これから認知症診療を始めるというプライマリケア医から絶大な支持を得ています。 「すぐに実践投入できる知識」「具体的な処方術」「目からウロコの知恵」「多くの医学書を読んできたが,初めて納得がいった」など,多くの感想も寄せられています。

筆者は,これまで28年間,認知症診療に携わり(そのうち20年は認知症外来), 日本一の認知症初診患者数(年間2,000人)を経験してきました。 診断もできず副作用を放置する医師の手にかかった大勢の患者に接して,認知症に対する処方術を世に広める意志や能力のない医学会に大きな疑問を抱いています。

筆者は,プライマリケア医こそが認知症患者を最期まで責任を持って診ていける医師だと考えています。 かかりつけ医は高齢患者にとって人生最後の主治医であり,安全な処方を心がけ,人間としても信頼されなければなりません。 心ない医師から冷たくあしらわれ,介護うつに陥ることもある介護者の心をも救う必要があります。

この本を通して,患者の素晴らしい人生を演出する劇的改善が可能な処方術を身につけてください。 認知症も改善に導くことができるということを知っていただくことが,この本の最大の目的です。 筆者が数万人の患者から学んで構築してきた「コウノメソッド」(認知症薬物療法マニュアル)を武器に,希望あふれる外来にしていただきたいと思います。
「難治」と思われていた患者が改善することの楽しさに,どうぞ目覚めてください。


<序文より>
2012年に出版した小著『コウノメソッドでみる認知症診療』は,認知症診療の総説でした。 本書はその続編で,改善症例をひたすら提示し,具体的にどのような処方をしたのか,その根拠は何であったのかを解説するものです。

改善症例の約1/3は,前医の誤った処方を直すことから筆者の仕事が始まっています。 前医の処方が誤っているのだから,その薬を中止すれば患者は改善するに決まっています。 その当たり前のことを述べるためになぜ1冊の本を書かなければならないのでしょうか。
実際のところ,歴史の浅い疾患である認知症の専門医などいるはずがありません。 ところが,精神科・神経内科・脳神経外科の中枢神経系3部門が認知症の“専門医”ということになっているのが現状です。 しかし,学会のアンケートを見ると,この3部門の医師たちのほとんどが認知症を診たいとは思っておらず, また得意でもないということは明らかです。

厚生労働省もこの3部門に認知症診療を期待しました。 プライマリケア医には,困ったら3部門にセカンドオピニオンを乞うよう指導してきました。 ところが,筆者の講演を聞いたケアマネジャーが連れてくる問題症例は,9割を超える確率で専門医による診療を受けてきた患者でした。 専門医が認知症を熟知しているという厚生労働省の前提は,みごとに裏切られたわけです。

特に深刻なのは,薬剤過敏性を特徴とするレビー小体型認知症への処方のまずさです。 知識をもたない一部の神経内科医はパーキンソン病のようなものだと思い,また一部の精神科医は表情が暗いから抗うつ薬で元気になるはずだと勘違いしています。 伝統的な自分たちの学問に付け足しをしただけの付け焼き刃的処方では,患者が改善するどころか高い確率で悪化し,医師にかからないほうがましだったという帰結になるだけなのです。

中枢神経系3部門の医師たちが,認知症患者急増のこの危機的時代にこそ認知症治療の特殊性を勉強し直し,認知症に必要な独特の処方をされることを期待しています。 その動きが起きなければ,筆者はプライマリケア医が効率よく自力で患者を治すシステムを世に広めていくしかないと覚悟しています。

したがって,本書の目的は次の通りです。
● 多忙な実地医家(プライマリケア医)が,自信をもって認知症診療に手軽に関われるようにする。
●画像なしでも大方の診断ができ,家族から評価される処方ができるようにする。
● コウノメソッド(認知症薬物療法マニュアル)を世に広める。
●抗精神病薬をシンプルに分類し,頭を整理できるようにする。
●典型例,難治例を掲載し,同じような患者に遭遇したときに,処方すべきイメージが思い浮かぶようにする。
プライマリケア医も,中枢神経系3部門の医師も,本書を通じて認知症に必要な本当の治療を理解し,実践してくれることを望みます。



<はじめにより>
レビー小体型認知症(DLB: Dementia with Lewy bodies)は、不思議な病気です。
薬の種類や用量を絶えず患者の病態に合わせて変えていかないと、よく効いていたはずの薬が次の週には副作用を生じるということすら起きます。

しかし、DLBの特性や薬剤過敏性を知っていれば、少なくとも自分の出した処方で病状をいっそう悪化させることは防げそうです。 そのために、私は急いで「正攻法」を世に伝える必要性を感じました。
DLBの治療は、老年医学の縮図です。 ただでさえ、薬剤の「安全域」(有効域と副作用が出現する用量の幅)が狭い老人であるのに加え、薬剤過敏性という壁があって、信じられないくらいの低用量でもDLB患者に強い副作用が起こり得ます。
この本は、忙しい医師、介護に疲れきったご家族のために、なるべく文章は簡略化して図を見ながら理解できるように工夫しました。




では、ATDはどうしたらいいのか? 実は、私はATDだけのことについて書かれた本を1冊も持っていないし、読んだことがない。 読んだことがないから、ここで書きようがない。
ただ言えるのは、上述の本でATDのことは足りるのではないかと思っている。 ATDが進行すればDLB化するのだから、ATDはDLBの亜型くらいにしかみていないのである。

今回はコピペが多かったが編集に時間がかかった。 ところで、私の趣味のひとつはカラオケである。 ダークダックスの「絆」はカラオケに行くと必ず歌う。 コウノメソッドで認知症医療の絆を広められたなら嬉しい。